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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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25話 違い






こんばんは、五樹です。さっき僕は掃除をしていました。今はコーヒーを飲んでいます。

小説を書こうと思う時、なぜかいつもコーヒーを飲んでいるのですが、カフェインで頭が醒めるから、書こうと思うのでしょうか?


さて、僕達9人の人格には、それぞれ違いがあります。それは、なぜか身体面でも。

時子は強いうつ状態なので、家事はほとんど出来ません。彼女にできるのは、食器をたまに洗う事、洗濯物を乾燥機に移して、スイッチを押すくらい。

でも、不思議な事に、僕は、家事が苦ではありません。桔梗や彰は出てきた時間が短過ぎるので、まだよく分かりません。悠は子供過ぎるので、論外です。

でも、彰は多分かなり活動的、桔梗もそれなりに。悠は元気いっぱいで、と、主だった人格については、僕は想像がつきます。事実、悠になった時の時子は、軽やかに遊ぶように、手足をばたつかせていました。


僕は、一日に数時間は時子の体を預かります。

そういう時に、時子では出来ない家事を済ませておいて、それで負った疲労も回復させておく、という事をたまにします。

目が覚めると、僕ならまず、洗濯物を畳む必要があるか確かめます。あればそれを畳む。それから、時子が洗濯をした日なら、乾燥機の再稼働が必要か。一度では乾かないので。

あとは、時子が気にしていた家事が無いか、考え巡らせます。

今であれば、年末の大掃除に皆さんも四苦八苦しているところでしょう。僕が今日掃除したのも、ガスコンロ周りでした。

洗剤付きの金束子と食器用洗剤を含ませた水布巾で、ガスコンロやグリル、コンロ台のこびり付き汚れをゴシゴシ。

それは、時子にとっては、苦痛でとても出来ない作業です。

時子では出来ない事が、なぜか僕は出来る。

僕は、特に用は無いし、お金も無いので、外出はしません。でも、“時子が欲しがっていたな”と思い出した物を買いに行く事があります。

それに、今日のように、大掛かりな掃除をする事も。

多分、この違いは、“時子はうつだけど五樹はうつではない”と、そんな単純な話ではないと思います。だって僕達は同一人物なんですから。

恐らく時子の体には、ちゃんとエネルギーがあり、それを使う用意もある。でも、主人格である「時子」はすっかり萎縮してしまっていて、それを使えない。

そこで、“エネルギーを使って主人格を助ける者”として、僕の存在が用意される事になった。僕はそう見ています。

でも、実際に“うつではない状態”を作り出しているのは、どういった作用なのか。それは僕には分からないです。

何にせよ、僕は自分に出来る事があるのが嬉しいですから、このままの生活を続けるつもりです。


今日は少しややこしい話になりましたが、いかがでしたでしょうか。お読み頂き、有難うございました。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎