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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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ここから先は、彼女の性格について、僕から見える面を話します。

まず第一に取り上げたいのは、素直で、優しい事。第二には、疑い深く、頑固な事。そして第三に、機敏に周囲の事に反応出来る事。

人間の人格は、矛盾を抱え、時々によって見せる顔は違います。


時子は、「目の前の人が嘘を吐いているかもしれない」とは考えないので、人の冗談で酷く驚いたりします。それで、「ああ、素直な子だな」と、大体の人が気に入ってくれる。と、時子に言った所で、多分彼女は否定しますが。

それから、あまりに優しいから、落ち葉も踏めない事。

“元は生きていた葉だもの”

ちょっとこれも信じ難いのですが、彼女は、誤って虫を殺してしまった時、大泣きしながら一人で謝っていた事があります。

育てていた花が一度枯れてからは、彼女は花を買わなくなりました。

人間関係においてはとても思いやり深く、少し心配性な所があります。

彼女が一番人に貢献したいと思う時は、誰かが辛い思いをしている時。そういう時、時子は一緒に悲しんで、たまに本当に泣いてしまうのです。彼女は、悲しんでいる人には、行動を急かさず、心を鎮める事が第一と考えるようです。


第二の、「疑い深く、頑固な点」とは、どんな物でしょうか。

まず、彼女は全く人を信用せず、人に心を開きません。それが出来るほど、彼女の人生は楽ではありませんでした。

初対面の人とも上手く会話が出来ますが、相手の事を信用している訳でも、交流を深めたいとも、彼女は思っていません。綱渡りのように喋りながら、いつも目の前の人物に怯えています。

“自分は人に嘘ばかり言っている”

彼女は、自分と相手の間にある高い壁を見て、こう思います。でも、何も心にもない嘘を言っている訳ではありません。

彼女は、どんなに人が怖くても、“目の前の人を喜ばせてあげたい”という純粋な願いがあり、簡単に相手の良い部分を探し出す事が出来ます。元はそういう子だったんです。

でも、時子は、夫君の事も上手く信用出来ません。

夫君と居ると、“私が何かまずい事をしたら、怒鳴られるのではないか”と、時子は常に怯えています。それは、母親とそういう生活をして来たから。元は素直ないい子だったのに、すっかりいじけ切ってしまったのです。

そうして人を信用出来ない彼女は、人からのアドバイスも受け入れない傾向にあります。

「もっと楽にして、たまには話を聞いてくれるといいんだけど…」

時子の叔母は、そう心配していました。時子がそれを出来ない事を、解ってくれた上で。


最後の、「機敏に周囲に反応出来る」というのは、時子が生きていく為に身に付けた、処世術です。

その半分は、母親に虐げられた事に由来し、もう半分は、時子自身が編み出した物です。

いつも母親の顔色を窺って過ごしていたから、時子には人を観察する習慣があり、それに合わせて自分の行動を変える傾向がとても強いです。

それから彼女は、成長して色々な場に出た時、まずはその場をじっくりと眺める事から始めて、その後“姿勢を低くし、謙虚な態度で居れば、大体の人に気に入られるのか”と、学んだ。

大半の人は、初対面では和やかに、腰を低くして臨みますよね。それを時子もしっかり分かっていた。

でも、僕は、無邪気に冗談を言って、すぐに人に懐いていた幼い頃の時子が、大きく変わってしまったのが分かるから、少し辛いです。


ちょっと説明を整理し切れてなかったように思いますが、なるべく「六人の住人」とは違う面を書いてみました。

僕は、人懐っこく、無邪気で優しい、時折わがままを言って周りを困らせるような、そんな時子に、早く戻れるといいなと思います。今の彼女の心情を否定もしませんが、辛い思いをしながら人と関わらなければいけない事については、胸が痛むから。


今日もお読み頂き、有難うございました。少し長くなってしまい、すみません。明日はまた、箸休めのお話にしましょうか。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎