八人の住人
21話 時子とはどんな人か
おはようございます、五樹です。今日はまともな時間に起きられました。
大したトピックスもないので、ここで、主人格の時子の紹介を、改めて詳細にしましょうか。
過去作の「六人の住人」で、彼女の半生については語りました。今回は、現在の彼女が、どのような生活を送っているのか、どんな人格なのかを話しましょう。
時子は、まず、体調が良い時と悪い時で、全く別の人のようになってしまいます。
彼女はうつ症状を持っています。うつ状態というのは、気候や、疲労状態などで、時々刻々と変化する物です。
だから、例えば、晴れの日にはいつもより元気が良い。反対に、天気が荒れて気圧の谷がやってくる台風の日、もしくは酷く疲れた時などは、本当に酷い状態になったりします。
元気が良い日の時子は、とにかくくるくると、ずっと家事をしています。信じられない事ですが、洗剤を付けた濡れ布巾で家中の床を手磨きする事もあります。
元気な時には、僕や夫君が用意した野菜のおかずもしっかり食べ、自分で炊飯器を使って炊飯をする余裕もあります。もちろん、その後釜を洗って、新しく米を研ぐ事も忘れません。
調子が悪い時の彼女は、布団にくるまったまま涙が止まらなかったりします。少し力が出たら、テーブルに就いて、叔母に電話をして慰めてもらったり。
トイレに行くのも辛いから、食事の用意だってろくに出来ない。食パン2枚にマーガリンを塗って、粉末の人工甘味料を掛けたら、それで終わり。
もう一つ特筆すべきとして、外出時の話をしますが、今年の彼女は、去年よりも人ごみに耐えられなくなっています。
うつ症状を抱えていると、長い間移動をした先で人ごみに揉まれるのは辛いものです。でも、時子は音楽ライブが大好き。彼女は、それ以外ではほとんど出掛けません。
25歳を過ぎたあたりから彼女は時折ライブハウスに行くようになり、去年と一昨年は、地元や、都内の色々なライブハウスに、通いつめていました。でも、今年はそれは出来なくなった。
彼女にとっては「状況は悪くなっている」と感じられるのかもしれませんが、それはとんでもない誤解で、とても良くなっているのです。
時子は今まで、大変な無理を自分に強いてきました。音楽ライブに行けていた時だって、帰り道の電車でずっと泣いていたりしたんですから。
“楽しいなら、辛くてもいいや”
今までの時子は、そんな風に、自分の体を全く気遣わなかった。でも、カウンセリングに通うようになって、それは変わりました。
カウンセラーの話や、それに釣られて自分が口走った事から、彼女は、自分が今までどれだけ自分を追い詰めてきたかを知った。
今でも元気な時には働き続け、そしてくたびれてしまうと、酷く落ち込んで動けなくなる。このサイクルが回り続けています。