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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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20話 命名






こんばんは、五樹です。今日も夕方4時に起きました。

昨日の話で、「時子ちゃん」と名付けられた人格を、僕は「ミニ」と呼ぶと話しましたが、やっぱり異論が出ました。


昨日、“「ミニ」か「ちゃん付け」”を書き終わり、投稿まで済んでしまった直後、頭の中に、「いや!いや!いや!」と叫ぶ声が鳴り渡り、僕は一瞬目眩がしたように思いました。布団に寝転んでいたので、気のせいですが。

ただ、それが「ミニ」の声だとは分かっていたし、彼女が「いや!」と言いたがる物についても、分かりました。

仕方なく僕は目を閉じ、ミニが呼ぶ、心中深くの景色へと身を投じます。


そこは、真っ白く、丸い空間。でも、あまりに白いので、壁がぐるりと僕達を取り囲む様子も、うっすらとしか目視出来ませんでした。そこで、真ん中より少しズレた所に、女の子がかがみ込んでいます。

彼女は膝を曲げて地面に足をつけ、僕を見上げて、「やだ!」と言いました。

初めて向かい合った彼女は、5歳の女の子らしく、短めの髪を一部だけ結んで、結び目には、プラスチックの赤い花飾りがぴかぴかしていました。

服装は白いTシャツに赤いスカートで、ちびまる子ちゃんの格好をしたじゃりン子チエのようなイメージです。

僕はちょっと気が重いながらも、彼女の傍に胡座をかきました。



彼女は顔を上げず、真っ白な床を指でいじくって、いじけていました。

「何が嫌なんだ?」

そう聞くと、彼女は僕を見て大きく口を開けます。

「“ミニ”なんて、変です!名前を考えて下さい!」

“やっぱりそうなるか”と思い、僕は適当に好きな漢字を並べました。

「夜見(よみ)は?」

そう言っても、ミニは顔を上げずに脇へ向かってこう言いました。

「それってあの世じゃないですか」

「違うよ。夜の中でも見える程、強い目を持っているという事だよ」

本当は適当に漢字を並べただけなのに、なぜか僕は言い逃れをしようとしました。

「でもぉ…」

納得しないミニに、次に思いついた名前を告げます。

「じゃあ、真実(まみ)は?」

これは、漢字を見れば格好良いですが、かなり女の子らしい名前だったので、喜ぶかと僕は思っていたのです。でも、ミニはがばっと頭を上げて僕を睨みつけ、喚きました。

「そんな可愛い名前、似合うわけないじゃないですか!」

“えっ!?可愛いのダメなの!?”

僕はそこから、焦って頭を捻りました。“女の子は可愛い名前を喜ぶはずだ”というのは、全くの先入見だったようです。

「そ、そう?えーと、じゃあ幸子(さちこ)は?」

「「子」が付いてるじゃないですか!」

“なんで女の子の名前で子がついてる事に文句言われなきゃいけねえんだよ…”

だんだん付き合い切れなくなってきて、僕は少し投げやりな気分になりました。

“とにかく、じゃあ可愛くなければいいのか?”

男女共に名付けられる事が多い名前の中から、僕はその名前を選びました。

「じゃあ、薫は?」

僕がそう声を掛けると、ふてくされていたミニはすうっと首を持ち上げて、まんまるい目で僕を見ました。驚いたようです。

「かおる…?いいですね!かおる、いいです!」

そう言いながら、「薫」はどんどん笑顔になっていきました。

「よし、決まりな」

なんとなく僕達はハイタッチをして、僕が目を開けると、寝室の天井が元通りにありました。


薫が女の子らしい名前を選ばなかったのは、元々の時子の性格に由来するかもしれません。

時子はボーイッシュな服装を好み、髪もショートヘアです。小学生の頃から彼女はそうで、学校でも、新幹線柄のお道具箱を使っていました。

薫の喋り方が、5歳なのにとてもしっかりしているのも、今なら違和感などありません。

時子は親から、高すぎる理想を求められていた。それを拒否するには、家を出るしかなかった。薫はその時に生まれた存在。それなら納得です。


これで僕達は9人となりましたが、今の所はタイトルを変更する予定はありません。

取り急ぎ、訂正の様な事をする為に書いただけなので、今日はこれまでに留めます。毎度、場面の説明があまり行き渡っていない事をお許し下さい。お読み頂き有難うございました。

それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎