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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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八人の住人

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18話 反目し合う人格






おはようございます、五樹です。先ほど、時子、それから僕、あとは桔梗の3人で、それぞれコーヒー、緑茶、紅茶を飲んでしまいました。僕は今、動悸が酷いです。

でも、これは全て時子が用意して、一人で飲もうと思っていた分です。

コーヒーと紅茶を少しずつ飲んだ時点で僕に交代し、そんなにたくさんカフェインを摂るのは、やめさせないといけないと、僕は思いました。

だから、僕がちょっと飲みたかった緑茶を一口二口飲んで、残りを捨てようかと思ったのです。しかし、そうしたら時子に恨まれてしまう。

眠る為に心中深くに引き返していった時子は、今日は不安定だったから、僕は恨まれていました。


時子が不安定になれば僕が現れますが、それが更に彼女に混乱を招く。「どうして混乱してるのに、時間を奪うの」と彼女は泣く。

夜の9時くらいに叔母に電話をしていた時にも、時子は僕をあまり良く思っていないような話をしていました。


だから、僕はまず、そういう時の応急処置的な対処法として、重要な物以外は、Twitterの僕のつぶやきを消そうと思いました。そうすれば、僕の存在は遠ざかるので、“なんで消したんだろう?”とは訝りながらも、時子は安心してくれます。


ここからの説明はかなり長いですが、なるべく分かりやすくなるように努めます。

目立って最近と思しき物で、残しておかないと困るツイート以外を、僕は消していこうと思っていました。でも、僕も途中で酷く眠くなったのです。それは、桔梗が目覚めたがっていたから。

“仕方ない。ここは桔梗にお願いしよう”


僕が目を開けると、それは、別人格達が住む、フラットの目の前でした。

桔梗が、一番端の自室から出てきた所です。

「頼む、後をやっておいて」

そう言うと、桔梗はすぐに足を踏み出して、こう言いました。

「あんたは干渉し過ぎなのよ。だからこうなる。馬鹿」

“そう言われても、交代を迫られたら、やらない訳にはいかないんだけど…元々、誰と交代するかは、時子が決めているんだし”

そうは思いましたが、僕はひとまず部屋に戻って、電気を消しました。僕達は、自室の電気を消さなければ交代出来ません。


その後、表に現れた桔梗が行ったのは、確かにツイートの削除ではあったのです。でも、それは、僕の存在を示唆する物全てでした。

食事の記録も、服薬を何時にしたのかも、僕がこの子に伝えたかった重要事項についても。時子が僕の発言に言い返したツイートも、全てです。それをしている時の桔梗は楽しそうで、尚且つ彼女は怒っていた。僕はそう感じました。

そうしている内に、桔梗は、400mlもあった紅茶をすっかり飲んで、ティーカップやティーサーバーも全て洗い、元の場所に戻します。そうして彼女は、満足して引き返して来ました。


桔梗が眠る前、僕は声を掛けたのですが、同じ事を言われました。

“なんて事をしてくれたんだ。これじゃ何も分からないじゃないか”

“うるさいわね馬鹿”

彼女は短くそう言っただけで、自室の扉を閉じ、電気を消します。

僕は桔梗からは嫌われています。

多分彼女は、“絶好の機会”と思って、仮初にも、僕の存在を一切消しに掛かったんだと思います。

作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎