八人の住人
13話 返答と羽根猫の話
おはようございます、五樹です。現在僕は、コーヒーを飲みながら、これを書いています。
時子もコーヒーが好きですが、僕は、「マキネッタ」という抽出器具で入れたコーヒーしか飲まないんです
時子は、「マキネッタは苦味が強く出過ぎるから苦手」と言います。彼女は、「フレンチプレス」という抽出器具でコーヒーを飲みます。
僕からすれば、苦味がきりりと感じられるマキネッタは絶好で、フレンチプレスは本当に甘みが強すぎて、少し苦手なんですが。人の好みとはそういうすれ違い方をするものですね。
本題に入る前に、時子に返事をしましょう。「五樹さんがこれを聞いたらなんと言うか」と言っていた事です。
“私はなんだか、自分が生きているのは罪で、生きていく道でその罪を償わなければならない気がするんです。そこから逃げるのは許されないように思うんです。”
彼女は前の話でこう言いました。
多分時子も分かっているとは思うのですが、彼女が自分を「生きてちゃダメだ」と思い込むようになったのは、母親に度々「死ね」と言われたからです。
それから彼女は、母親から咎められると、それを取り返そうと常に努力をしていました。それは償いに似ています。そこから逃げれば、母親からの折檻があるから、彼女は逃げられなかった。
君は、過去の為に苦しんでいる。でもそれは、君にとってはまだ“過去”ではない。今も君の中に根ざして、君を支配している。
自分から逃げる訳にはいかないから、君は常に苦しい。僕達は、それをどうにかして取り去ってやりたい。今はここまでしか言えません。