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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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八人の住人

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五樹さん以外の人格の人の話だと、悠さんの話は、読んでいてヒヤヒヤしました。だって、もし私をあまり知らない人の前で悠さんが出てきたら、大変な事になるからです。彰さんでも困るのですが。

彰さんの紹介の話の時は、読んでいて、とてもそれが自分の一面だとは思えませんでした。まず、私に母を恨む気持ちは無いので。それに加えて全人類を憎むなんて、そんな八つ当たりがあってたまるかとも思ったんですが、やっぱり、彼も私なんでしょうか…。

それから、五樹さんも食事量の違いを話していたと思いますが、とにかく五樹さんは食事量が多いです。

彼は、私の夫と連れ立ってラーメン屋に行き、ラーメンとチャーハンのセットなんて食べてしまったりするのです。

人は、食事をした記憶が無いと、「ああ、満腹だからお腹が苦しいんだな」とすぐに理解する事は出来ません。だから私はいつも「なんかすごく苦しい!」とだけ思って、夫に様子を聞いてみると、「さっきラーメン食べたんだよ」なんて言われるのです。

桔梗さんは食事が少なく、バランスも良いようだし、悠さんや彰さんが食事をしたという話はまだ聞きません。でも、五樹さんはとにかくたくさん食べてしまうので、それだけはなんとかして欲しいと思っています。いえ、ここまで気遣ってくれているのに、これ以上何を望むんだという話なのですが…。



そう。これ以上無い程に、私は気遣われています。それは「三十年でも」続けるとも言われています。

でも、それでも上手くいかなかったら?私が、三十年経っても母の呪縛から解放されずに、うじうじしたままだったら?

五樹さんは私の一部なんですから、傍に居てくれるでしょう。でも、夫は?彼も私の傍に居られるのでしょうか?あと何年かこのままだったら、私に失望して、私との別れを選ぶのでは?

そんな風に疑う気持ちが消えないというのが、悲劇的な過去に縛られている事そのものを表しているんでしょう。



私は時に、こう思うのです。

“たとえ一生このままでも、善い人となる事を志しながら、生きていける”

なぜそんな事を思えるのかは分かりません。大層な自信ね、と誰かに言われてしまうでしょう。

私はなんだか、自分が生きているのは罪で、生きていく道でその罪を償わなければならない気がするんです。そこから逃げるのは許されないように思うんです。

五樹さんは、私がそう言ったら、何と言うんでしょうか。

皆様、こんな話しか出来なくてごめんなさい。主人格なのに、意志薄弱で、本当に申し訳ないです。

次回からは多分、また五樹さんが書くと思いますので、それをお楽しみに。ではでは。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎