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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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10話 五樹の困り事






おはようございます、五樹です。今回は、時子の毎日について短く話しましょう。

時子は、現在専業主婦です。そして、病気療養中で、うつ症状が少し重く、外にもほとんど出ない。

彼女の毎日は、刺激が少ないようで、嵐のような苦難です。

PTSDのフラッシュバックで、苦痛を思い返す瞬間は、ふとした事で簡単に訪れます。

例えば、苦しかった時に聴いていた音楽を聴いた時、突然に過去の辛い記憶を思い出して、ひとりでに泣いてしまったり。

彼女は一日中家に居て、リビングの椅子と、寝室の布団を往復する。それしか出来ない状態なんです。

ほとんど何もしていないのに、気力と体力の消耗を常に感じ、日々を過ごすのを苦痛に感じ、時子はたまに死を思い描きます。

それでも彼女は、“死んで逃げたりしない”、“一生このままでも、私なら絶対に大丈夫”と、強く自分を励まします。

時子は食事のバランスを気遣う余裕がなく、調理をする気力もありません。

食事の内容は、冷凍した米や食パン、レトルト物や、夫や僕が調理しておいた野菜のおかずなどです。電子レンジで温めるのが精一杯である時子のため、用意をしてくれる夫には、感謝しています。

でも、時子は野菜を食べるのが苦手なので、気力が無い時は野菜のおかずを食べてくれなかったりします。身体のためには、食べて欲しいのですが…。

時子の夕食は大体夕方5時くらいで、それを食べ終わったら、夕食後の薬と、睡眠導入剤や安定剤も飲んでしまいます。

彼女は、苦しい毎日から、逃れたがっている。だからすぐに眠ろうとするのです。

でもそうすると、とても早い時間に目覚めてしまう。それに、早過ぎる時間に睡眠導入剤を飲むと、よく効かないので、睡眠時間が短くなってしまいます。

作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎