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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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124話 愛を知らないという事






皆様こんにちは、時子です。今回は私が短く、今日夫と話した事、そして理解出来た「理解出来ない自分」について、お話したいと思います。


私はよく、「優しい」、「愛情深い」と言われます。カウンセラーさんからそう言われた事もあります。ですが私は、自分の愛や優しさが紛い物で、混ぜ物がたっぷりされた偽物であると「感じて」います。その原因は解っています。

今日、私は育児疲れから、泣き続けたり、うつ症状が酷くなって立ち上がれもしなくなりました。その事で「抗うつ剤さえあれば」と夫の前で口にしました。

双極性障害を持っている私は、テンションが簡単に上がり過ぎる(簡単に書くとこうなります)ので、うつ症状がどんなに重くても抗うつ剤は飲めません。躁転も病気の酷い状態だからです。

ですが、「抗うつ剤さえあれば育児を乗り切れるのに」と芯から不安で、本気で願いました。

私がそう言うと、夫は「子供の顔を見れば疲れも吹き飛ぶから、それを抗うつ剤だと思おうよ」と言いました。普通ならそれで慰められてしまうのかもしれません。ですが、それなら「産後うつ」などというものは存在しないでしょう。恐らく、育児で辛い思いをしているお母さんは、全員それを言われたら泣くしかなくなるのだろうなと思いました。

それからの事です。私の人生の深淵が訪れました。


「…子供の顔を見ても疲れが吹き飛ばないのは、子供を愛してないからかも…」

私がそう口にして、それから話が大きく広がって、最終的にその風呂敷はなんとか畳まれました。

「そんな事ないよ。君はちゃんと子供を愛してるじゃないか」

「ううん、私は愛してないんだよ。だから二人の顔を見ても変われないんだよ…」

「すまなかったよ…そんな風に辛い思いをさせる言葉だと思わなくて…」

「……でも、私、誰に聞かれても、「この人を愛してますか?」って誰かについて聞かれた時、「そうです」とも「違います」とも言えない…本当に愛してるのか、私には解らない…」

「それはやっぱり、お母さんに愛されなかったからだろうねぇ…」

「私に対して、「愛情深い」とか、「優しい」とか言ってくる人が理解出来ないし、私の知らない私をみんなが見てるみたいで、怖くて仕方ないの…」

夫は「そっかぁ…」と言った切り、困って俯いていました。それから私は自分の心を自分なりに整理し、なんとか見切れたと思います。



作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎