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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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123話 癖






こんばんは、五樹です。今回は育児の話は一旦お休みし、時子の「癖」について話しましょう。丁度今晩もその癖が元で夫婦仲に亀裂が入った所です。


皆さんは「認識の歪み」というのを感じた事はおありでしょうか。「この人とは価値観が合わないな」といった感じです。時子は、ある点においてそれが非常に他人と異なっているのです。それは、「自分が悪かった」と過剰に思い込む点です。


過去、時子は母親に起きている間中叱られ続け、全てを自分の落ち度のせいにされ、全てを否定され、何もかもが時子のせいにされました。その長い年月の傷跡は、時子から消えなくなってしまい、それが彼女のPTSDとDID(解離性同一性障害)となったのです。


具体的な例を出すと、時子は、相手から「ちょっとさっきのは…」など、控えめな言い方で何かを指摘された途端、パニックを引き起こして泣きながら謝り続けるようになってしまうというような具合です。

これは、母親から叱られた時を心身が思い出してフラッシュバックを起こし、当時に心身の状態が戻って、まるで目の前に居るのがあの頃の母親とまるで同じ価値観の人間であるかのように恐れ、謝り続けているという事です。

時子は常に弱いフラッシュバックを起こしていて、周囲の人間、地球上の人類は全員母親と同じような人間だと、習慣的に思い込んでいます。

何も彼女は「みんなお母さんと同じような人なんだ」と本当に信じ込んでいる訳ではありませんが、幼い頃から自分を親から否定され続けるというのは、本人にもどうしようもないほどの傷を残してしまうものなのです。


そんなこんなで、今日夫君から少々発言を咎められた時も、彼女の罪悪感は暴走に暴走を重ねてしまい、本当に酷い事になりました。今僕が出てきているのは、その事が苦痛だった時子を眠らせる為だと思います。


児童虐待は恐ろしいものです。時子は今日、「聞き分けの無い子はどんな扱いを受けても文句なんか言っちゃいけないし…」と、本気で発言していました。それほどに認識が歪めさせられているのです。

これから、カウンセリングに通ったりして、なんとか彼女を救えるようにしなければいけません。このままでは生きていけませんから。


僕は心配をしますが、どうやら僕が時子を大事にするような発言をすると、時子の方では大事にされた経験が無い事から拒否感を覚え、「五樹さんは間違ってる」と感じるようです。その事も、カウンセリングで良くなるでしょう。いつの日か。


今日はかなり重たい話になってしまい、すみません。僕はこれから休みたいと思います。今もこの文書は寝転んでスマートフォンで打っていますが。


皆様いつもお読み頂き有難うございます。これからも僕は頑張っていきます。それでは、また気が向きましたら読みに来て下さい。ありがとうございました。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎