八人の住人
122話 無茶がたたって
皆様お久しぶりです、五樹です。時子の夫君が眠っているので、その寂しさに耐えられない彼女の代わりに、僕が出ています。
まずは時子へ、ご出産おめでとう。よく頑張った。でもね、頑張り過ぎです。
ここ数日、退院してきてからの時子の様子を話しましょう。
朝起きてコーヒーを飲んだら、もしくは授乳の為に目覚めてからコーヒーで一息ついたら、夫君が眠っていたら洗い物を、自分の朝食を軽く支度し、食べたらリビングで椅子に掛けてだらだらと。寝室に居る子供を気にしながら。
夫君が起きていれば家事はある程度任せますが、彼が起きていても洗濯を始めたり、中腰にならないと出来ないオムツ替えを率先してやったり、授乳は自分でやりたがったり。
お断りしておきますが、産後というのは一ヶ月は通常分娩でも母親をほとんど絶対安静にさせるのが当たり前なのです。ましてや帝王切開後に皿洗いや米研ぎをやらせていい訳がありません。そもそも、育児中に浸漬が必要な炊飯などやっている暇は普通ありません。
それを時子は「過去にも開腹手術は経験があるから」と、根拠の無い自信をもってして家事まで担い、無理をし続けていました。
一昨日から時子は膀胱炎になり、昨日から結膜炎が始まりました。産後に無理をしていたから、免疫力が下がってしまったのです。大人はなかなか結膜炎にはならないでしょう。このまま無理をし続けたら、風邪を引いたりするかもしれません。これでは何の為に夫君が一年も育児休暇を取ってくれたのか、わかりゃしません。
その現状を踏まえ、僕「五樹」は、夫君に「しばらくはリフレッシュの為にコーヒーを飲む時と食事の時以外座らせたくない、母乳をあげる時以外は育児にも積極的に参加させたくない」と、お願いをしました。夫君は快諾してくれました。
本当に、時子の頑張り屋にも困ったものです。元々病人で、帝王切開の手術後なのに、皿洗いなんかやってる場合ではありません。骨盤が緩んでいて中腰は激しく痛むし、手が冷えてしまってもすぐに体の方で温められる程の体力も無いのですから。
双子は2人共臍の緒が取れ、病院に入院している子から受け取ってきた分と、家で取れた子の分を、ティッシュに包んで棚にしまってあります。保存用の桐箱は昨日注文しました。
これから育児はもっと大変になるでしょう。そろそろ下の子は退院してきて、双子育児が本格的に始まります。どうか時子が壊れてしまわないようにと祈ります。
現在精神科では出産に合わせてかなり薬が減っており、何も無くても不安定になりがちな所を、時子は、子の為と一心に自分を支えております。彼女が辛い目を見ているのに、僕は、夫君が眠ってしまっている時しか支えてやれません。
元々僕は、子を産むのは反対していました。でも、時子が子に向かって微笑んでいるのを感じる時、彼女は心から笑っているように思います。その事は少し僕を安心させました。
さて今朝起きたのは夜中の0時ですが、眠ったのは昨晩7時半です。睡眠は足りていません。僕はこれから休まなければいけません。
僕としては時子が心配でとても不安ですが、なんとか彼女の支えになれるよう、僕は休む事に注力します。時子は休んでくれませんから。
まだまだ暑い日が続きますね。今年も過ごしやすい秋は一瞬で過ぎてしまうのでしょうか。皆様は熱中症に気を付けて下さい。いつもお読み頂き有難うございます。