小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

八人の住人

INDEX|140ページ/152ページ|

次のページ前のページ
 

120話 大転換、どんでん返し






皆さま、お久しぶりです、時子です。この度、更新がひどく滞り、その後のお話ができないままで、本当に申し訳ございませんでした。

五樹さんは、あれから眠っています。私たちは日々親しく、心中で会話をし、互いが目覚めたときの記憶を共有しては、笑い合いました。不思議なものですね。自分の感情なのに、まるで彼は別人です。私とはまったく違う考え方の人でした。


さて、皆さまに無沙汰をしている間、私は夫と一度離婚をし、その後私の妊娠が発覚し、離婚した夫と再婚をして子どもを育てることにして、日々闘っています。

突然こんな話をされて、ご心配の方もいらっしゃるかもしれませんが、夫は育児休暇が始まるまでの間をすべて有給消化に当ててくれて、毎日世話をしてくれるので、双子を妊娠していてもいくらか安心です。

そう、赤ん坊たちは双子でした。でも、産院でそれがわかったときの私は、むしろ「やっぱりそうか」と思ったのです。


あれは今年の6月でしたでしょうか。どうもおなかが痛いような、重いような気がして、張って痛むような感覚に私は悩まされていました。その前に叔母の家を訪ねたときに、叔母は「あれ?おなかが大きいな?」と、ちらと思ったのだと、あとで叔母から電話で聞きました。

妊娠がわかる前、私は夫から突然離婚を切り出されて、仕方なく父の家に居ました。父は、都会で暮らしています。そこへ「離婚をすることになったから」と打ち明けて少しの荷物で訪ねると、優しい父は私の住む家を探し始めてくれました。

新居が決まって入居をしてからも腹部の違和感は去らず、時折動くような感覚に「ひどいガス溜りかな」などと思っていましたが、あるとき、以前とはずいぶん体調が変わって、体がおかしくなっているようだと、ウェブに不良点を入力したら、妊娠の諸症状が検索結果として出てきたのです。

私が「妊娠かもしれない」と恐れて眠ってしまった間で、ドラッグストアで検査薬を買ってきて検査をしてくれたのは、悠くんでした。結果は二度とも陽性。悠くんはわんわん泣きました。

「時子ちゃんが耐えられるはずない!こんな病気の中で子どもを育てるなんて!それも一人で!でも、殺せるはずもないよ!どうしたらいいんだろう!?」

悠くんが「殺せるはずがない」と思ったのは当然でしょう。私は自分の双子の片割れを、人工中絶によって亡くしています。三度手術が行われましたが、それでも私は出て来なかったので、私の父が母に頼み込んで、産む運びとなったと聞きました。

その話を思い出したから、私は目が覚めてから、「もしかしたら私も双子を妊娠したかも?」と思ったのです。


翌々日の産院でエコー検査をしました。

「まあ、もうすごく大きい…双子ちゃんだわ…こっちは男の子ですね、見えてる…」

6月時点で子どもたちは体の様子が分かるほど大きくなっていて、性別も決まっているようでした。ちょうど二人とも体をぐるりとこちらに向けていたので、男の子と女の子の双子だとわかったのです。検査室から診察室に戻ってからがさあ大変ということになりました。

産院の先生はひどく緊張した面持ちでした。私もです。

「〇〇さん…赤ちゃんの大きさから見て、現在妊娠21週と、あと2日で22週とされる2人の赤ちゃんです。それで…どうなさるかは〇〇さん次第ですが、“それ”を決めていいのは、あと2日までです」

私は絶句するしかありませんでした。人工中絶ができるのはあと2日だけと決まっていて、法的にはその後はもう産むしかないらしいからです。多分そういうことだろうとわかりました。


作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎