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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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八人の住人

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119話 現在は四人






お久しぶりです、五樹です。


この間、病院で一度医師に呼び出されてから少しして、僕の統合もほどけました。現在は、時子、悠、5歳時子、五樹の、四人でやっています。5歳時子は、もうあまり出てきませんが。

最後に5歳時子が出てきたのは、時子の叔母の家でした。叔母は猫を飼っていて、その猫に、悠が会いたい会いたいと騒ぎ、僕達は叔母の家に行きました。

叔母の猫と悠が戯れ、少し僕も表に出て叔母と話などした後、5歳君が目を覚まします。

5歳君は初めとてもびっくりしていましたが、今居る場所を説明されてから、話を始めます。

「時子ちゃん…ママを置いてきちゃったの…」

「置いてきちゃった?」

叔母は驚いた事でしょう。時子が7つの時に離婚を選んで時子を置いていったのは、母親の方です。

「うん…ママ、たまにごはん作ってくれたの…「みなさーん、ごはんですよー」って呼んでくれたママ…時子ちゃん、5歳の時に、家出して置いてきちゃった…!でも、やっぱり帰りたいなって思ったよ…!」

そう言って5歳君は泣きます。確かに時子は5歳の時に、あまりの家庭環境の劣悪さから、家出という言葉すら知らないまま、家出をしました。警察に保護されましたが。


僕はまさか、5歳君が、「家出をして母親を置いてきたショック」から生まれたとは思っていませんでした。でも、5歳の頃のトピックスと言えば、それ位しかありません。

家出をする程の恐怖から生まれたとも言えますが、彼女の言う事から察するに、「母親を置いてきた」方により強いショックを受けていたのは明らかです。つくづく優しい子だなと思いましたが、これではあんまり時子が気の毒です。そんなに母親の方ばかり気遣っても何も返ってこなかったのに。

叔母の家で出てきた後、5歳君は出てこなくなったので、彼女の心の告白は済んだのでしょう。叔母がしっかり事情を飲み込んで慰めてくれましたし、満足したのだと思います。


ここから、話は悠の事に変わります。

僕、五樹は、ちょっとした失態を起こしてしまいました。

僕がほどけてから少しして、朝起きた時から目覚めていた僕は、食後の暇潰しに、ホラーゲームの実況プレイ動画を観ていました。

しばらくして悠が目覚めるとその動画は僕が止めた後でしたが、また僕に交代する前は、僕は悠に大層怖がられました。

その日は交代がとても頻繁で、また僕に交代した時には、悠が生き物が好きだったのを思い出し、僕はちょっと寄生虫の動画を観る事にしました。

でも、直接的な画像や映像が出てこない、ただの解説動画なのに、また悠が目覚めた時には、ホラーゲームの時より怖がって、わんわんと泣いてしまいました。

「やだー!五樹お兄ちゃん、あんなに優しいのに、なんであんなの観るの!?怖いよ!怖いよ〜!」と、そう言って悠は泣きました。

あんまり怖かったからか、しばらく悠は落ち着かず、「こわいゲームより、こわいむしさんのほうが、こわい」と泣いていました。考えてみれば、ホラーゲームは実在しませんが、寄生虫は地球の様々な場所に実在しますからね。まずかったかもしれません。


それで僕は、大人時子からも、時子の夫君からも叱られてしまい、すっかり呆れられてしまったのです。

まさか、画像も映像も出てこないのにそんなに怖がるとは思わなくて、ちょっとやらかしをしたかなと思い、全員に謝りました。


ところで、時子と悠は最近とても仲が良く、時子は悠に、自分のお金からぬいぐるみなど買ってやっています。

悠はなぜかウニとキーウィがお気に入りなようで、家にはウニのぬいぐるみがあり、今度また新しく別のウニのぬいぐるみと、キーウィのぬいぐるみが届く予定です。

僕も、好きなバンドのTシャツを買ってもらえる予定だったらしいんですが、寄生虫事件で、それは無しとなりました。まあそれは別にいいんですが。


5歳君は大人しく引き篭っているようだし、悠と時子の関係は良好です。ただ、悠は果物ばかり食べたがるので、そこら辺はきちんと指導しなければいけませんが…。


毎日僕らは賑やかに暮らしております。時子はそれなりに満足が出来ているようです。暖かくなってきて参りましたね。でも、夕刻には冷えますので、皆様、羽織る物は忘れずに持ち、お出掛けなさって下さい。お読み頂き、有難うございました。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎