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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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117話 混乱する統合






お久しぶりです。五樹です。


随分前、「病院で統合をする」と書いた切りですね。

結果として、統合をしたのですが、それは解けてしまい、時子は不安定な時期が続き、辛さから自分で記憶を14歳当時まで退行させてしまったりしました。

今は、時子の記憶は35歳の現在へ戻り、悠と、僕と、時子が主に出てきています。

桔梗も一瞬だけ出てきて、「レモンティーを作るから、レモンを頂戴」など言っていたのですが、僕に「疫病神」とぶつけたっきり、出てきません。

直輝やあかりは用が無いのか、出てこなくなっています。

今度の病院で、また一から統合をやり直さなければなりませんが、医師曰く、「統合が何度も解けてしまう人も居る」そうです。

いっぺんにやると上手くいかないのではないかと思う方も多いかもしれませんが、医師の話では、体にきちんと定着させる事が出来れば、一度にやるのも構わないそうです。


前々回の病院では、既に全ての人格から統合についての承諾を得ていて、表に出ていたのは悠でした。

「あのね、全員、承諾済みです!」

悠がそう言っただけで、医師は「そうなんだ、じゃあ、今日全員やっちゃおうか」と気軽に腰を上げ、夫君は診察室を出ました。


「じゃあ、まずは、怒りの人格のパワーがあった方がいいから、彰君から、出てきてもらえるかな?出てこれなかったら、膝をちょっと触るね」

「なんでこんな事をしなくちゃならない」

顔を伏せ、目も開けないままそう言ったのは、既に彰でした。医師は動じずにこう返します。

「うん、一緒にならないとね、時子ちゃんが弱いままになっちゃうから」

「…わかったよ」

そして、目を閉じたままの彰の右後ろに医師が立ち、背中の端をトントンと叩いていました。

「もういいからね、これからは、一緒になって、時子ちゃんを強くしてあげようね」


その作業を7人分続けましたが、あかりの時には説明に手数が掛かりました。何せ、0歳なので。


そうしてせっかく統合した人格も、数日で解けてしまい、本人が自力で統合を試みるも、いつも必ず、悠から解けてしまいました。

どうやら悠はよっぽど自己主張が強いらしく、彼から解けてしまう事がいつもなのです。


悠は楽しそうに健康的な食事をし、少し家事もして、ずーっと音楽を聴いています。今度、時子がCDを買ってやったようです。

僕達はこのままでもやっていけるかもしれませんが、医師はそれでは納得しないでしょう。自我を分裂させてショックを分けるというのは、緊急避難法なのですから。


今後どうなるかは分かりませんが、しばらくは悠、僕、時子の三人四脚になると思います。今日は、気圧が下がっているので、体調不良からか、僕は久しぶりに出てきました。

皆様も、お寒い折ですので、お体には気を付けて下さい。それでは、また。



作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎