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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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113話 早過ぎた帰還、進化する“あかり”






こんばんは、五樹です。いえ、もうおはようございます、でしょうか。今日は大きな議題が二つあります。


まずは、悠の話。結論から言いますと、彼の統合は上手くいかず、悠はまた、元通りに毎日、食事の役割を担っています。

時子はまだあまり元気がないので、食事が出来ません。しかし、僕ばかり食べていると不健康な食事になるという事が分かっているので、悠を呼び出したのでしょう。僕はカップラーメンが大好きなので。

そして悠は、子供だからか、お金をあるだけ使ってしまう癖があるので、この度「お小遣い帳」なる物が導入されました。ちゃんと書いてくれるといいのですが。


さて、次の話に移りましょう。それは「羽根猫」の話です。人格の格納される部屋では、僕の部屋に居る、時子が胎児だった頃の、トラウマの人格です。

しかし、彼はもう「羽根猫」とは呼べません。

何度か羽根猫は出てきましたが、その時、ちょうど時子の叔母と電話が繋がっている時が多く、叔母は懇切丁寧に羽根猫に接してくれました。本当に、申し訳ないくらいに。

しかして、羽根猫は名前を自分で考えました。僕達交代人格の中で、生まれた時に名前を持たされていなくて、自分で考えたのは、彼だけです。

彼は、叔母にこう話していました。

「ぼくは、まんまるの、あったかいところにいたの。そこはちょっとあかるかった。だから、名前はあかりにする」

どうやらそれは胎内の話のようですが、胎内は少しは明るいものなのでしょうか?僕にはそれは分かりません。

“あかり”は、「体の真ん中がくうくうするの」と言って、お腹が空いた事を訴えたり、「これは、しむしむする!」と言って、ブドウが渋い事を表現したりしました。

「おいしい?」

そう叔母が聞くと、あかりはこう答えます。

「おいしい、って、なに?」

「あ、心が、まんまるくなる、かな?」

それはみかんを食べた時の事でした。

「うーん、ちょっと、なるかも」

「そっか、良かった」

なかなか扱いづらく、かなり話していても分かりづらいのですが、少しずつ、時子が幼い頃の記憶などを彼は思い出しています。記憶は未来へと動き、理解が進んでいます。


悠の事は今まで通りで、周りが承知してくれているのですから、大丈夫でしょう。

時子も、今日は苦もなく入浴が出来たようで、「なんだ、少し面倒だと思うくらいなら、毎日入れるかも」と、拍子抜けをしていたようです。

時子本人のフラッシュバックが、漢方薬によって、薄れつつあります。これからは、色々と良い報告が出来るでしょう。

お読み頂き、有難うございました。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎