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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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八人の住人

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95話 主人格たる時子






こんばんは、五樹です。皆さまお久しぶりです。


今日、久しぶりに統合がほどけました。それは、体調不良のストレスに耐えられなかったからです。

気圧も下がっていて、更に睡眠も足りておらず、統合してからの時子は、食事量も少な過ぎます。だからだと思います。

でも、僕が出てくれば必要な分の食事は出来ますし、可能であれば昼寝もします。僕も、必ずしも睡眠に不自由しないわけではないのですが。


ですが、困った事が一つあります。

統合がほどける度に、93話「記憶と統合」で話したように、「主人格たる時子」が、酷く怯えるのです。彼女はこの間、はっきりと「統合したくない。統合したら私は消えちゃうんだ!」と泣いていました。


恐らく、統合している間の記憶は、時子の物でありますが、僕の物でも、桔梗の物でも、他の人格の物でもあります。

統合がほどけた「主人格たる時子」は、「他の人格の記憶を持ち得ない」という特徴を持っています。だから、彼女は、僕達交代人格と少しでも記憶が重なっていた時、つまり統合していた時の記憶を、持てないのでしょう。

しかし、「統合なんてしたくない」とまで言うとは思いませんでした。そう言って泣いた後の時子は、深夜までリビングのテーブルにしがみついて、「統合なんかしないように、ちゃんと自分を見張る」とも言っていたのです。幸い、その時には、緊張と疲労が原因で僕に交代したので、すぐに眠れましたが。


人は、記憶がなければ「自分がした事だ」とは思いません。でも、そんな状態には普通陥りません。

「主人格たる時子」に事を理解させるのが絶対に必要なのか、それとも、ただ統合されている状態を安定させれば十分なのか。

それは僕には分かりませんが、今のままでは、統合がほどけて「主人格たる時子」になってしまった時には、時子は苦しむでしょう。

「大丈夫だよ」と言ってあげても、彼女には理解出来ません。「自分の知らない自分」が居るのですから。僕は、もう少し事が穏やかに運ぶといいなと思っています。


今日は短く、ここで失礼します。お読み下さり、有難うございます。また来て下さると嬉しいです。それでは、また。




作品名:八人の住人 作家名:桐生甘太郎