帰りの電車で人身事故だった
まず朝目覚めると、無事に目覚めたことに感謝する。一晩何事もなかったのは幸運である。
朝、仕事に出かけられること、これには少し抵抗があるが、感謝すべきことだろう。
ご飯が食べられる事、お茶が飲める事、ヨーグルトが食べられること、猫が見送りしてくれることなど、感謝すべき事は多い。
病院には、大勢の患者さんが来てくれる。
私に会いたくて来る患者さんもいるが、病気のため仕方なく来る人が大部分だろう。
遠いところわざわざ来てくれるのだから、感謝しないわけにゆかない。
患者さんが来てくれないと病院は成り立たないからだ。とくに私の生活は成り立たない。
しかし、感謝するのも限度がある。
あまり忙しかったり、次々に面倒な注文をされると、感謝の気持も薄らいでくる。だまって早く帰ってくれる患者さんに感謝することになる。
患者さんのほうはどうなのだろう。
感謝する人としない人は半々ぐらいのようだ。
悪かった病気がよくなれば、私は嬉しい。
患者さんも、たぶん喜んで感謝しているのだろう、と想像する。
しかしそれを言葉や態度に表さない人がいる。
作品名:帰りの電車で人身事故だった 作家名:ヤブ田玄白