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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 8 元カレが帰って来ると

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 ヒデキはカウンターの外から目の前に並ぶボトルを二つ握った。
「お前見てたら。遠慮不要だもんな」
「何がですか?」
「簡単に口説けそうってことだよ」
「ええぇ! なんでそう思うんですか?」
「彼氏には鍵かけておいて、自分は自由ってな」
「違いますよ! そんなことしてませんよ。彼氏とは今もいい関係なんですから」
「なら、心配事も何もないなら、自由に遊びまくれるじゃないか」
「だから違うんですよ。心配事はあるんです」
「例えばどんなこと?」
「・・・元カレがね・・・帰って来るんですよねぇ~」
「元カレって、その外国に行ったってやつ?」
「そう。それが突然金曜に帰って来るんです」
「ああ、そう言う事か」
「何が?」
「元カレをキープしたまま、今の彼氏と付き合ってたのか」
「ちがう。そうじゃないですよ! 別れたはずなのに、あんまり気にしてないみたいで、元カレ」
「どうなるか見ものだな、また進展があったら話しに来てくれ」
 ヒデキは恵美莉の隣で、ボトルからゆっくりグラスに注ぎ、赤いカクテルを作り、最後にレモンを添えて、
「はい、ハッピバースディ!」
そう言ってカクテルグラスの底部を、親指と中指で挟んで恵美莉の前に差し出した。
「うわぁ。きれいなカクテル。なんて言うんですか?」
「スロー・ジン・フィズ」
「へえ、赤いジン・フィズなんだぁ」
ヒデキは恵美莉の隣のカウンターチェアに腰かけた。
「7月の誕生石ルビーにちなんだカクテルで、情熱を象徴する永遠の愛の証とか何とか」
カクテルを見つめながら説明すると、
「えぇ? 愛の証?」
恵美莉は少し驚いた口調で言った。するとヒデキは恵美莉に視線を向け直した。
「お前は純愛から程遠い熱愛の方だな」
「それ、褒めてないでしょ」
「俺みたいな浮気相手から贈られてるんじゃ、仕方ないだろ」
今度は、耳元に近付いて言った。
「う~ん。確かに、受け取っていいものかどうか?って気がして来たじゃないですか」
と困ったふりしながらも笑顔で話す。