EMIRI 8 元カレが帰って来ると
その後、颯介は一人で歩いて帰ると言って、その場で二人は別れた。恵美莉はまだ用事があるからと、一緒には帰宅しなかった。暫く街灯の下で、颯介が暗闇に見えなくなるまでその後姿を見送って、真っ暗な夜空を一瞬だけ見上げた。そしてキッドの車を停めた駐車場に向かって歩き始めると、ポケットのスマホが鳴った。その画面を見ると、LINEの着信だった。
(あ、春樹君か。これが颯ちゃんだったら、シツコイところよね)
[決めた。今日の車買う!イエイ]20:22
(春樹君。本当にお気楽ね)
20:22[よく考えたの?]
既読
[考えてたら楽しくなってきた]20:23
20:23[じゃ、ローン頑張らなくちゃ]
既読
[がにばる ( •̀ᴗ•́ )]20:23
(ふふふ、春樹君って、本当にかわいい。このタイミングでLINEくれるなんて嬉しい。ありがとネ♡ あたしの一番大事な人)
恵美莉はドヤ顔とも取れるスカした笑顔をしながら、駐車場で待っていたキッドの車に乗った。後ろいっぱいまで下げられた助手席を、前へ調整しながら、
「キッド、色々ありがとね」
と、とても穏やかな気分で言うことが出来た。
「どうなった?」
「一番大事な友達になった」
「一番大事な友達? これからずっと?」
「うん。それは一生変わんないと思う」
「ふ~ん。じゃ俺は何番なの?」
「へ? 考えたことない。でもあんたは番外よ」
「眼中にない言い方だな」
「特別って言えば納得してくれる?」
「よかった。これからも何でも遠慮なく言ってくれ」
「あんたに遠慮なんかしないわよ」
「そうだよな」
作品名:EMIRI 8 元カレが帰って来ると 作家名:亨利(ヘンリー)