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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 8 元カレが帰って来ると

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「俺、ほんの少しお前を置き去りにしたけど、別れるつもりなんかなかったんだ」
「あたしだって別れたくなかったわよ。でも、あなたがいない毎日なんか・・・」
「たった1年じゃないか。俺たちの絆はもっと・・・」
「もう遅いよ! 絶対無理!」
この言葉には無意識に力がこもっていた。
「恵美莉・・・」
「1年間でどれだけのことがあったと思う? もう昔のままじゃないの」
恵美莉は、目に涙が込み上げてくるのを感じ、颯介から顔をそむけた。
「新しい彼氏がいるからか?」
「そう。1年前からあたしだけ、違う人生を歩き始めたの」
「・・・まるで小説みたいな言い方するんだな。恵美莉は昔のままじゃないか」
「いいえ、あなたがいなくなってから、もう小説は書いてないわ。そんな落ち着いた毎日じゃなくなってしまったのかな」
「こっちだって、毎日忙しくしてたから」
「それじゃ颯ちゃんは、寂しくなかったのね?」
「・・・い・や、そんなことないよ。一応別れはしたけど、恵美莉のこと考えたりしてたよ」
恵美莉は一瞬返答に戸惑った颯介を見て、ある想像をした。

「じゃ、他で気を紛らわすしかなかったわよね」

 この言葉は、颯介の心を突いた。恵美莉には、颯介が誤魔化そうとしていた真実に向き合う覚悟があることに気付いたのだ。
「そんなこと問題じゃない。お前のことが一番大事なんだ」
「颯ちゃん。すぐカンボジアに戻っちゃうんでしょ」
「ああ・・・」
「それじゃ今、あたしたちは何かをスタートさせるタイミングじゃないと思うの」
「それでも俺、必ず帰って来るから」
「それまであたしは待てないよ。こっちにあたしの生活もあるんだから。今のあたしに大事な人も関係してるの」
二人は立ち止った。そこは噴水の設置された大きな池の前だった。時間はちょうど夜の8時。噴水は急に止まってしまった。
「・・・・・・」
颯介は何も言わなかった。辺りは静寂に包まれている。頭上の街灯に照らされ、地面に浮かび上がった影を見ながら、颯介は全身に力を入れて体を震わせた。
「颯ちゃん?」
「うん! 分かった。これからは友達でいてくれ!」
「もちろんよ。一番大事な友達ね」
颯介は恵美莉に両手を広げて近寄った。恵美莉も自分から両腕を大げさにパッとげ広げて近付き、二人は強く抱きしめ合った。