EMIRI 8 元カレが帰って来ると
「3つ歳上の現地のスタッフなんだけどよ、妊娠させちまってさ」
「げ、お前、それでよく帰って来たな。逃げて来たのか?」
「そうじゃないんだ。俺が向こうに戻るのは間違い無いんだけど、その赤ちゃんは本当に俺の子かどうか判らないんだよ」
「ヤバい話だな。なんとか日本に来たがってるような女じゃないか?」
「その通りかもな」
「日本に呼んで赤ちゃん産んだら、日本人っぽくない色黒の子だったってことにならねえか?」
「その心配はもうないんだ。堕ろしたから」
「ひ、お前・・・」
「違うんだ。俺が悩んでるのを見て勝手に中絶したらしいんだ」
「・・・なんかおかしい。その女、気を付けろよ」
「ああ、解ってる」
「それなら縁を切った方がいいような気がするけど」
「それがクメール語を話すのが可愛いんだ。結構、甲斐甲斐しくやってくれるから、離れらんないんだよな」
「それでよく恵美莉のこと(義理立てしてる)って言えるな」
キッドは呆れて本音が出てしまった。
「そうなんだよなぁ。なんか日本と向こうじゃ、別の話みたいに感じちゃってさ」
(何てこと言うんだ)と、キッドは正直、颯介の感覚を疑った。
「絶対騙されないように気を付けろよ。なんぼ遊んで来てもいいけど、持って帰って来るなよ」
「それはしないよ」
終には真剣に颯介に付き合うのが、馬鹿らしく思えてきた。
「それでいて、恵美莉に何を求めてんの?」
「・・・いや~、冷静に考えたら、何で恵美莉に拘ってるのか分からんようになってくるな」
「また意外なこと言う。大事な女だって言ったばっかりだろう」
「それが当たり前で、疑う余地がないくらい当たり前の付き合いしてたから、元に戻るのが当たり前なんじゃないかって思ってただけかもな」
「本当にそう思うなら、きっちりと話し合って、ただの友達に戻るってのも、未来につながることだぞ」
「ただの友達って? 恵美莉と俺が? イメージ沸かないな」
「高校の時、恵美莉が俺に、彼女と別れても親友になればいいのにって、アドバイスくれたことあったよ」
少し間を置いて、しんみり話し出す博之。
「ああ、千鶴と香織の二股の時だろ。恵美莉からその話聞いたことある」
「二股ではない! チィと付き合いだして、カオとは親友になったんだ」
「微妙なタイミングでな」
「絶妙なタイミングだ。今のお前よりはマシだ」
「・・・そうだよな」
「話し合って、さっぱり整理した方がいいと思うぞ。俺が呼び出してやるよ」
作品名:EMIRI 8 元カレが帰って来ると 作家名:亨利(ヘンリー)