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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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EMIRI 8 元カレが帰って来ると

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「明日からどうしよう、チャリ。て言うか、今日の帰りも、チャリ」
「せっかく通学用に買ったのにね、チャリ。弁償してもらえるんでしょ、チャリ」
「チャリチャリチャリチャリ、はははははは」
横でみのりは、笑いを我慢できない。
「そりゃそうだろうけど、今すぐじゃないし」
「今すぐ買って、後で支払ってもらえばいいじゃない」
「・・・あ、そうか」
「そうかって、何言ってんのよ。もう~、やっぱり頭打って悪くなったんじゃない?」
 恵美莉は春樹のガーゼを少しめくって、傷口を見ようとしたが、やっぱりやめて首を振った。みのりも覗き込んだが、残念そうに首を引いた。
「大丈夫だって」
「いやん。かわいそう」
「じゃ、慰めてくれ」
「うん。これ食べていいよ」
結局、アイスを全部差し出すのだった。
「俺、車買おうと思うんだ」
「え? 何バカなこと言ってんのよ」
「乗りたくない?」
「チャリの代わりに車で通学するの? 50万じゃいい車なんか買えないよ」
「ローンするよ。オトンが保証人になってくれるし」

 教室での講義中、その課題は上の空で恵美莉は考えた。
(なんだかんだ、いろんなことが起こるな。ヒデキさんが言ってたみたいに飛び回り過ぎかな)
時折、黒板を見たりテキストを見たりしながら、
(暫くおとなしくしようと思っても、颯ちゃんは帰ってきたらすぐに会いたがるだろうな。会ったりしたら変な事になりそう。あたし絶対断れないわ。と言うより情に流されてしまうだろうな。何か手を打っとかないと)
窓の外を見た。新緑の桜の木にスズメが何羽か群がって、慌ただしく動いては飛び立っていく。
(ああ、忙しいの嫌だなぁ。春樹君はマイペースなのに、あたしは周囲に振り回されてる感がある。突然車買うって、どういう気なんだろう?)
一羽のカラスが近付くと、スズメは一斉に飛び立った。そしてカラスはその木の枝に止まった。
(ああ、あたしも逃げたい。誰か助けてくんないかな? そうだ仲間がいれば・・・桧垣先生? 協力してくれそうだけど、先生があたしに味方してるってバレたら、秘密の関係もバレちゃうかな?)
「カァーカァーカァー」
(3回鳴いたな。あれは仲間を呼んでるんだって、誰かが言ってたな)
そのカラスと目が合った。
(お前じゃ仲間になれないよ)