EMIRI 8 元カレが帰って来ると
第3章:問題の対処
「春樹君・・・どうしたのよ。その頭」
「ああ、ケガは大したことないよ」
大学キャンバスのベンチで、恵美莉がクラスメイトの川辺みのりとアイスキャンディを食べているところに、春樹がひょっこり現れたのだが、いつもより大学に来る時間が遅かった。しかも、頭に四角いガーゼを貼り付けている。そんな春樹の遅刻も、恵美莉にしてみれば大して心配するようなことでもなく、(どうせ寝坊したんでしょ)ぐらいに考えて連絡もしていなかったのだが。
春樹は恵美莉の横に座った。そして彼女が手に持つアイスを、大口開けてかじり取った。
「菅生先輩、こんにちわ」
みのりが挨拶すると、春樹はアイスを口の中で転がしながら、みのりに2回頷いて、
「さっき・・・登校中に・・車にはねられてさ・・・チャリン車(自転車)が・・・」
口をモグモグさせて話し始めた。
「事故に遭ったの!? 大丈夫なの!?」
恵美莉は驚いて大声で聞いたが、横にいたみのりのびっくりの表情は、恵美莉の何倍も強烈である。
「ああ、チャリが壊れて・・・」ゴクリと飲み込んだ。
「春樹君は大丈夫なの!?って聞いてんでしょ!」
「ああ、見たら解るだろ。大丈夫だって」
春樹はもう一口かじろうと首を伸ばしたが、恵美莉はその手を遠ざけて阻止した。
「頭ケガしてんじゃない。どうなったの?」
「うん、見通しの悪い交差点で、横から出て来た車にはねられて、救急車で・・・」
恵美莉はそのガーゼをまじまじと見た。
「救急車乗ったの? 頭打って?」
「それ大変じゃないですか? 相手捕まえました?」
みのりも心配そうに聞いた。
「相手は逃げてないよ。勢いよく跳ね飛ばされて、地面に落ちた時に擦りむいた程度だ」
「へ、そんなとこ跡が残るじゃない。ハゲが」
心配そうな恵美莉に対して、みのりは春樹の頭を見て少し笑っている。
「髪の毛で隠れるから大丈夫だよ」
「じゃ、将来禿げないようにしないと・・・禿げたらハゲは目立たないか」
「そ、そりゃそうだっくっくく」
と、みのりも相打ちを打ちながら、笑いをこらえられなかった。
「何言ってんだ。問題はチャリン車が壊れたってことなんだ」
「そんな目に遭って、一番の心配がチャリなの?」
作品名:EMIRI 8 元カレが帰って来ると 作家名:亨利(ヘンリー)