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二重人格による動機

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 そう、彼女の宿泊していた部屋から、遺書が見つかった。しかもその遺書というのは、シナリオ形式に書かれていたようで、刑事の解決場面も、自分が死を選ぶ場面もまるで予知していたかのように克明に描かれている。
「あのオンナ、本当に予知能力があったんじゃないか?」
 と辰巳刑事が訊くと、
「あそこまでシナリオが描ける女性だったら、あったかも知れないですね。人間というのは、誰もが超能力を持っているんです。それを使う機会があるかどうか、つまり、意識しなければ超能力は使えないということ、彼女はシナリオを作った時点で、その覚悟はできていたのかも知れない。だから、予知できたんでしょうね」
 と桜井刑事がいうと、
「彼女にとっての、見えない敵がきっと存在したんだろうな。それが仮想敵になって、その存在が、事件をシナリオにしたのか、シナリオが事件となったのか。それはきっと高木明子にしか分からないんでだろうな」
 と、目の前で断末魔の表情に、有頂天になっている満足感を浮かべた複雑で、これ以上ないというほどの不気味な表情を浮かべて死んでいる高木明子がいるのだった……。

                  (  完  )



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作品名:二重人格による動機 作家名:森本晃次