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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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元禄浪漫紀行(41)~(50)

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それから後日、いつものように俺の仲間が家の戸を叩いた。その日、家には俺以外居なかった。「不忍弁天へ行くんだ」なんて事言われたって、三味も弾かない俺には用がない。


トトトントンと小気味よい音がして、癖のある速い叩き方に、あの晩、合力役をしていた次郎だとすぐに分かった。俺は慎重に戸を開ける。

「よお」

顔を出したのは確かに次郎で、次郎の後ろには誰も居なかった。俺はほっとした。それから「上がるぜ」と言って次郎は俺の脇をすり抜け、土間から上がって煙草盆を引っ掴んだ。

くすんだ藍色の着流し姿の次郎は、当たり前のように、腰から抜いた煙管にうちの葉を詰める。奴の指は太く、煙管を持ち上げた腕は肉が盛り上がって力強い。

大して慌てている風にも見えなかった次郎は、大きな体でゆったりと胡坐をかいていた。煙管を持っていない方の腕は、膝を押さえるように肘をいからせている。

次郎はもう二十二なので、四つも年上だ。でも俺達は同じ穴のむじなとして話していた。

「こないだ、どうしたよ」

俺がおそるおそるそう聞くと、次郎はしばらく黙っていたけど、急に鉄瓶がたぎるように笑い出した。

「カカカカ…そりゃあよ、俺が十手を食い止めてからの芝居を見せてやりてえよ」

「芝居って」

次郎はニヤニヤ笑いながら、俺に傍に来るように手招きする。

「つまりよ、盆茣蓙(ぼんござ)代わりに敷いてた布団が二枚あったろ。それを指さして、こう言ってやったのさ」

俺は「ふん」と相槌を打つ。そこから次郎は、もっといやらしい笑い方になった。

「“自分の自由で仲間と集まって、人に聞かせられねぇ事をしていたのは確かでございます。”そう言うと向こうは何かを言いかけた。だから、こう、な。“好き好きでしていた事ですから、見逃して下さい”ってな」

「なんでぇそれ。そんなんで帰るわけがねぇだろ」

俺がそう言うと、次郎はまた面白そうに笑い転げる。なんだか訳が分からなかった。

笑うのがやまってから、なんと次郎はこう言ってみせたのだ。

「つまり、さ。俺達が集まってやってたのは…番うためだ、なーんてな」

俺はその時、思わず、ぞぞぞと寒気がした。男五人でくんづほぐれづなんて、想像もしたくない。それから、次郎の肩を引っぱたく。

「何してくれてんだてめぇは!」

「良かったじゃねぇかよ!上手い事いって!」

「それにしたってそいつぁねぇだろ!」

俺達はそんな事を言って、笑い合った。