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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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元禄浪漫紀行(41)~(50)

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第四十二話 出て行け!






“秋夫を奉公へ…”

俺の目の先には、行きつ戻りつしているような自分の足が見えた。

“秋夫に耐えられるはずがない…”

秋夫は、働いた事もないし、家の仕事だって大して手伝わず、いつもぶうぶうと文句を言っていた。その上、母親の羽織を質に置いて女を買い、博打で取られてきては、俺やおかねに小遣いの催促をする。それも、十文二十文の湯銭程度じゃない。

そんな秋夫でも可愛いのが、俺達親だ。なろうことなら、苦労はさせたくない。どうにかして分かってくれて真面目になってくれるなら、その方が良いに決まってる。

俺は、“おかねに相談しよう”と思っていた所から道を改め、“秋夫が戻ったら説得をしよう”と腹を決めて、そこからは家路を急いだ。



うちの表店が見えてきて、木戸に手を掛ける前に、長屋の中が少し騒々しいようだなと思っていた。

女と男の言い争う声が聴こえてきていて、泣いている子供の声もする。そこまで分かった時に、泣いているのはおりんで、言い争っているのはおかねと秋夫だと、俺はすぐに気づいた。なので、慌てて木戸をくぐり、うちへと急ぐ。

「ちょっと借りるだけさ!二三日貸してくれりゃすぐに返ぇすよ!」

「何言ってんだい!てめえが物を返したことなんかいっぺんたりともないね!こっちへ返しな!」

「兄ちゃん!ダメ!」

俺が家の戸を開けたのはその時だ。おりんは秋夫の着物の裾にしがみついて、俺の居る戸の方へ引きずられる格好だった。おかねは、秋夫が持っている三味線に掴まって、ぐいぐいと引っ張っている。

秋夫が“借りる”とか“返す”とか言うのは、大抵質屋におかねの着物などを勝手に持って行った時だ。

いつかまだ、俺が下男だった時、おかねは三味をうっとりと眺めて、幸福そうにしていた。そんな場面を思い出し、それがまるで今泥で塗り潰されてしまったような気持ちになり、俺はとうとう我慢が出来なくなった。