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脳内アナフィラキシーショック

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 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。

            新入刑事

 月が替わると、どうしても仕事をしていれば、月末月初を意識しなければいけない人は多いだろう。月末締めが、月初まで続いたりして、普段は残業などないのに、月末月初の一週間くらいは残業を余儀なくされる人も少なくない。
 しかも、ほとんどの会社では、末端の社員から提出された月末締めの申請書であったり、報告書を部内で取り纏め、そこから本社の総務部に送られ、総務部で全社の集計を行い、締め処理の一環とすることが多いので、部署が違えば当然忙しい時期も違い、リレーのように忙しさが伝染していくのだから、待っている方も早く来ないと最終リミットが決まっているので、しわ寄せがどんどん増えてくる。
 到着した部署の分から、順々に纏めていければいいのだろうが、全社揃わないと書類が作れなかったりするので、結局、最終提出部にその責任はのしかかることになる。
 しかし、遅いところはいつも決まっていて、改善策はないものかと思うのだが、なかなか本部の思うようにやってくれない。
「本部は支店の現場との交渉をやりながらの仕事を分かっていない。実に甘い部署だ」
 と思っていることであろうが、本部とすれば、
「状況はどこの支店でも同じじゃないか。ほとんどのところが期日を守っているのだから、一部だけができないはずはない」
 と言いたいだろう。
 確かに、支店の方からすれば、立地や地域制での違いのため、提出書類以外でも、たくさんその日にこなさなければいけない業務があり、人手がとてもじゃないけど、足りていない。それなのに、どうして、人員も増やしてくれない本部から、そんなことを言われなければいけないのかと言いたいところであろう。
 しかし、本部の意見ももっともである。その意見に対して、強く出るだけの言い訳は存在しない。
 支店の方からすれば、
「現場の仕事も知らずに、都会のビル街でぬくぬくと仕事ができるなんて羨ましい」
 と言いたいだろう。
 しかし、それは本当は逆で、本部というと、
「まわりは役員や取り締まりが多く、パートや非正規雇用社員以外はほとんどが課長職以上の、そんな縦割りの本社では働きたくはないな」
 という思いもあった。
 ただ、そうでも思わないと、本部のやり方に疑問を呈するだけの言い訳が思いつかないというのも事実であった。
 そんな本部と支店の間のいざこざは日常茶飯事で、同じ支店の中、本部は本部の中で別部署と同じような喧嘩が絶えないところも結構あった。
 同じ支店でも、営業と管理部、さらには物流とはあまり仲が良くはないところが多い。本当は連携して、チーム一丸となって……、というのが基本なのだろうが、実際は、物流から言わせれば、
「営業は、無理な注文を取ってきて、一体何台のトラックと時間を使って配達しなければいけないのだ?」
 という疑問が起こるほどの物量を無理強いしてくる。
 特に発注を物流に任せているところでは、在庫の手配を営業がちゃんとしてくれていればいいが、していないなどというと、最悪である。さすがに、そこまでひどいことはないかも知れないが、キャパシティをオーバーしてしまう可能性はある。管理部もそのことではあまり期限はよくない。下手をすると、管理部での内販業務に従事している人からすれば、自分が折衝した値段よりも安く仕入れることになるので、これは本当であれば、支店長の認可が必要なほどの案件であるが、今は営業の判断に任されている。売り上げを挙げればいいという理屈なのだろうが、そのために会社の基本機能が振り回させることになることが本当の生産性を呼ぶか、疑問であった。
 営業からすれば、自分が取ってきた仕事に対して、他の部署が忙しくなったり自分の仕事のペースを崩されるということで、嫌な顔をしていると思っている人も少なくないだろう。考えすぎかも知れないが、実際にそう思っている人も少なくはない。
 確かに管理部や物流は、少し閉鎖的なところがあり、他から自分たちのペースを崩されることを恐れる人も少なくはないだろう。しかし、それはやってみなければ分からないことであり、そういう意味で会社に入ってきて最初の研修期間中に、支店に配属された社員は、研修後は営業をすることになっているとしても、一応すべての部署を経験させられる。中には他の部門に向いていると思われたり、他の部で急に欠員が出たりして、支店の事情等で、営業職に決まっていた人でも、しばらくの間、管理部での仕事を余儀なくされることもあるだろう。
 それが民間会社というもので、致し方のないところだと言ってもいいだろう。
 そんな月末でも、他の結末月初とは明らかに違っている時期が何度か存在する。正月を控えたいわゆる年末年始は明らかに特別な時期であるが、それ以外というと、三月から四月という時期が一番なのではないだろうか。
 普通の会社であれば、年度末ということで、会社にとっての正月を迎えるようなものである。中には年度末を二月にしていて、
「三月から新年度」
 という会社もあるようだが、ほとんどは四月一日が元旦と同じであった。
 この時期というのは、新入社員を迎え入れる時期であり、所属転換の時期でもあるので、部署替えなども頻繁に行われていて、歓送迎会なども活発な時期であった。
 だが、やはり目立つのは四月であり、まだそんな風習が残っているところがあるかどうか分からないが、前であれば、新入社員が近くの花見の名所の場所取りとして駆り出されるなどという光景がよく見られたものだった。
 それは本当の歓送迎会は別の席で設けられているのだろうが、新入社員が自らの手で掴んできた場所において、先輩社員から入社の祝いをしてもらう日として大切な年中行事の一つではないだろうか。
 最近では桜の開花が若干早まっているようで、年によっては、三月に満開を迎えるなどという、
「狂い咲き」
 のような時もあるようだが、大体は四月上旬から中旬までの間が花見の最盛期で、基本的に次の雨が降れば、ほとんど散ってしまうという、実に限られた時期であることは間違いない。
 その間、大体二週間と言ったところであろうか。
 ただ、まだこの時期の夜桜は結構寒いものであり、酒が入るとどうしてもトイレが近くなる。
 男性であれば、まだ何とかなる(警察に見つかるとヤバいが)だろう。しかし、女性はそういうわけにはいかない。満員の花見客が楽しんでいるのを見ながら、公園に設置された簡易トイレが空くのをじっと我慢するしかなかった。
 ひどい時は一時間以上も待たなければならず、下手をすれば膀胱炎にもなりかねない。男でも、トイレのことを考えれば、本当なら花見などしたくはないだろう。本当に花見が好きで、宴会を楽しんでいるというのは、どれだけの人数なのだろう。