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神の輪廻転生

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「君も綺麗だよ」
 と、そういってくれたのは、山口だった。
「ありがとう」
 と、あっけにとられたように、そう答えたが、里穂にとって、その言葉が目からうろこだったのだ。
――そうだ。彼の今の言葉が自分の怖がっていた部分を払拭してくれる言葉ではないか――
 と、里穂は感じた。
 人を好きになった時の顔が一番美しいというのは、里穂が一人の男性を好きになって、その人のイメージが頭に浮かんでいるということだ。それが山口であることは間違いなかった。
 山口も里穂の瞼に写った自分の姿を見て、それを確信した。
――本当に自分のことを好きになってくれた人でないと、瞼に写った姿を見ることができないんだ――
 と感じたが、それ以前に、瞼に写る姿を見ようなどという発想にならないだろう。
 だから、瞼に姿が写るかどうかは分からないが、結果的に写っている人が自分であるのを確認できた時点で、自分がその人を愛しているということであろう。
 そのことを証明できれば、里穂は自分の目的が達成できた気がした。
 里穂は、この瞬間のために、まりえに会ってきたのだし、まりえに話を訊いてきた。自分の意見も話して、こちらの事情も話し、分かってもらえたとは思うが、言葉にするのはそんなに簡単なことではない。
 こういう形で示してくれるとは思っていなかった里穂だっただけに、感動はひとしおである。
 里穂はそう思いながら、今大団円に自分が立っていることを自覚していた。
 だが、まだスタートラインに立っただけである。
 いや、まだスタートラインにすら立っていないのかも知れない。そこまでは何ともいえないと思っているが、見えてこなかったことが見えたことで、里穂は、階段を一段上ったことは間違いないと感じた。
 それからどれくらいの期間が経ったのだろう。里穂は山口と付き合うようになって、結婚した。その時の二人の縁結びとして君臨したのが、この私だったのだ。
「これが、私が二人に対してできる最後のことなんだよ」
 と言って、二人を祝福した私。
 二人は私を神として崇めてくれた。私もたくさんの幸福を二人に与えた。
 この世界は、神だって実は転生するのだ。ずっと生き続けていて、そして記憶は転生する前から残っている。そして、生まれ変わる。輪廻転生というやつだ。
 私は、また新たに生まれ変わった。目の前には新しいパパとママが、
「パパですよ」
「ママですよ。はじめまして」
 と言って、ニコニコ微笑んでいる。
 私は心の中で、こう叫ぶのだ。
「パパ、ママ、綺麗だよ。結婚したあの時のママだ」
 そう、私は、山口と里穂の子供として、生まれ変わった神の子であった……。

                 (  完  )



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作品名:神の輪廻転生 作家名:森本晃次