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悪魔のサナトリウム

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 とつかさがいうと、
「本当は、安藤さんはあなたの恋人だった。それをお姉さんがいきなり強引に奪って行ったんですよね? お姉さんというのは、あざといことにかけては右に出る者がいないというほどだったと聞いていますよ。そんなお姉さんはあなたに対して奴隷のようなイメージを持っていた。でも、お姉さんはそれを反省する気持ちはあったようです。記憶喪失に掛かりやすかったのも、あなたに対する贖罪の意識もあったからなんじょないでしょうか? あなたは、自分と彼のために、姉を襲わせた。襲ってくれる男は誰でもよかった。たまたま彼がいたということで、あの男は、欲深い男でね。姉に対しては、その美しさに心を奪われ、そしてそのあざとさに、あなたに身体を支配された。そういう意味では可哀そうだと言ってもいいでしょう。だから、あなたは彼は警察では何も喋らないと思った。でもね。さすがに殺人事件ともなると、彼も顔色が変わった。いや、君たちの計画が分かったとでも言おうか。君たちは彼を甘く見ていたんだね。彼の証言が出てくれば、事件は一気に解決さ。彼には犯罪計画の一端を話していたんだろう? そのあたりも分かっていたようだ。しかも、君たちの間違いはお姉さんを使ったことなんだよ。お姉さんの記憶はとっくに戻っていて、皆それを知ろうともしなかった。それだけ自分たちの計画に必死だったからね」
「教授は? 教授は知っていたのでは?」
 と安藤がいうと、
「もちろん、知っていたDさ、でも教授はすでに我々の協力者だからね。君たちはそこも分かっていなかったようだ。それだけ、計画的には浅はかだったと言ってもいいんじゃないか?」
 と刑事は言った。
「姉がまさか、記憶が戻っていたなんて」
「お姉さんは君たちよりもよほど頭がいいんだろうね。すぐに事件の概要が分かったようだ。ただ、自分が実行犯なだけに、完全に安全なところまでいかないと、自分の立場が悪くなるだけなので、そこは証拠が出てくるのを待って警察に来るつもりのようだった。さらにここがサナトリウムだったこともよかったようで、この雰囲気がお姉さんが気付いたことを犯人側に悟らせないようにしていたんだよ。彼女の方が一枚上手だね」
 と刑事がいうと、
「看護婦は?」
 と安藤が訊くと、
「彼女ももちろん知ってるさ。なるべく知らないふりをしてもらうのも大変だったというものだよ」
 と言っていた。
 二人は刑事に連れていかれ、姉はそのまま入院となったが、一体この事件で得をした人間というのが、いるのだろうか?

               (  完  )



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作品名:悪魔のサナトリウム 作家名:森本晃次