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静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:⑤山梨県の旅(白州、河口湖)

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■旅の2日目(3月22日)
 トイレに行きたくなり、目が覚めた。バンクベッドの小窓のシェードを下げると外は既に明るく、その小窓から手を出すと、冷気を感じた。キャンピングカーのマルチルームのハンガーに、いつも掛けているベンチコートを着て、道の駅の暖かいトイレに向かった。
 朝霧の中、薄っすらと見えたのは、南アルプスの北端の山々。その一番近くに見えたり、消えたりしていたのは甲斐駒ヶ岳か。晴れていたら、摩利支天(まりしてん)の岩峰の姿もくっきりと見えたのだろう。

 約30年前のことだが、職場の同僚と南アルプスの主峰、日本第2位の北岳に登ったことがある。登山口の広河原から、標高3193mの頂上がくっきりと見え、そこからの大展望を期待したのだが、登るに連れ、次第に雲に覆われてしまい、雲の中での登頂になってしまった。
 北岳から日本第3位の間ノ岳(あいのだけ)までの“3000mの稜線歩き”で、鳳凰三山、南アルプスの山々、そして富士山等の圧巻の景色を堪能する予定だったが、雲の中の稜線歩きとなり、気付くと、間ノ岳に登頂していた。そこから広河原に下山する登山だった。その時に、次に登る山は、南アルプス北端に聳える、花崗岩質の白っぽい山肌の甲斐駒ヶ岳と決めていたことも思い出した。
 この道の駅から山の方へ進むと「駒ヶ岳神社」があり、そのあたりの登山口からのアプローチは、日本三大急登の黒戸尾根コースで、それに挑む予定だったが、30年間、その機会はないままだ。

 キャンピングカーに戻り、エントランスのロックを開ける音と振動で、妻を起こしてしまった。再び、南アルプスの水を汲んで、それを使いながらの朝食の準備を始めた。
 自宅でキッチンに立つのは、妻がいない時に、袋ラーメンを作る時くらいだけだが、キャンピングカーの中では何故か、妻がいてもキッチンに立っている。まだ簡単なものしか出来ないが、朝食はパン、目玉焼きとウィンナー、コーヒー、牛乳、そして夕食の残りのチャーハンを温めたもので、妻は喜んで食べてくれた。

 朝食後、携帯で「雨雲レーダー」を見て、今日も“晴れ”を確認した。そして、この周辺のどこを回ろうかと、道の駅の観光マップのボードを見ながら考えた。サントリー白州蒸留所の見学はコロナ禍で中止になっているが、その周辺を走りながら、白州の高原を味わうことにした。
 道の駅から山の方へ上り、R20と平行した道に右折した。その周辺は、別荘か移住者の家なのか、そのような雰囲気の、それまでの場所の家とは異なった風情の幾つかの家が見えた。そもそもここは、避暑地なのだろう。もし土地代が安かったら・・・と、つい、そんなことを思ってしまう。

 私は避暑地の別荘暮らしを知らないが、娘の嫁ぎ先は旧軽井沢に別荘があり、埼玉在住の娘家族は年に4~5回、数週間程度、別荘暮らしを楽しんでいる。羨ましい限りだ。
 娘から聞いた話では、軽井沢でも夏は、次第に、エアコンが必要になってきているとのこと。地球温暖化は、色々な場所で、暮らしに変化を及ぼしているようだ。

 白州の高原の中の道路を、ちょっと寒いが窓を開けて、ゆっくりと走りながら、朝の空気を吸った。その先にサントリーの看板があり、駐車場に入ってみたが、事務所には誰もおらず、見学中止の張り紙が貼られていた。そこを出て、少し走るとシャトレーゼの工場があった。コロナ騒ぎが終わった頃に、もう一度、この白州の地に足を運びたい。

 道の駅「にらさき」に行くことにした。
 R20を甲府盆地に向かって下りながら、横を流れる釜無川を見ると、白い大きな石が川底まで続いている。昨日、R20沿いには、石灯篭が立つ石材店があったことを思い出した。釜無川橋を渡り、河岸段丘の急坂を駆け上がり、清里ライン(R141)に入った。この道は清里を経て佐久平に向かう道だが、今日はそちらには向かわず、甲府方面に下った。やがて道の駅「にらさき」に到着した。

 この道の駅の駐車場には3台のキャンピングカーが停まっていた。多分、車中泊した台数はもう少し多かったのだろう。駐車場は広く、奥の方にも広がっており、R141を走るクルマの走行音は、そう大きくないのだろう。車中泊に向いている駐車場だ。加えて、駐車場の横には釜無川の支流の塩川が流れており、河川敷が広がっていた。
 「ここだったら、焚き火台をトライできたのにね」と妻。実は、焚き火好きな息子に影響され、つい先日、焚き火台を購入したからだ。道の駅での車中泊では焚き火台は使えないが、今後、オートキャンプ場やRVパーク等での車中泊で、初の“焚き火台を使った宵”を楽しむことにしたい。
 そしてR141を挟んだ反対側には、モダンな外観の日帰り温泉「ゆーぷるにらさき」があった。まだ営業時間前なのだろう、数人のお年寄りたちが並んでいた。妙な歩道橋を渡り、温泉の入口までに行ったところ、10分待てば温泉に浸かることが出来るのだが、今はゆっくりしたい気持ちではなく、既にドライブモードになっていたので、朝湯はやめた。