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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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#3 身勝手なコンピューターとドローン

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ドクター・ワン



「・・・ター・ワン。ドクター・ワン。目を覚まして」
 優しく耳元でそう囁かれた気がした。ワン博士は寝たままの姿勢で首を持ち上げ、目を開けようとしたが、なぜか瞼を動かすことが出来ない。かすかに震える口をなんとか開けて、
「う、ううう、ど、どうした・んだ?」
「コールドスリープが終了したのよ」
 コールドスリープ。それは長期間の宇宙旅航には欠かせない手法。人工的な冬眠状態で代謝機能を極限にまで下げ、生命維持を行う技術であり、被験者はほとんど年を取ることなく、虚無な時間をやり過ごせる手段である。
「う~~~~ん」
 ワンは、休眠キャスケットの中で、ぎこちなく伸びをした。そして起き上がろうとすると、
「もう暫くは、手足の麻痺や、平衡感覚に違和感が残る場合があるけど気にしないで。まずは水分補給を行い、タブレットで栄養を摂取したほうがいいわ」
ワンにそう促した声は、とても優しそうな女性のものだった。
「君は誰だ?」
「私はマザーよ」
マザーとは、この宇宙船を管理するメイン・コンピューターのことである。
 そばのケースが開くと、その中に補水液の入ったボトルと3粒の錠剤が収められていたが、ワンは目を開けられず、手探りでボトルをつかんでそのキャップを口で開けた。
「もう惑星アップルに到着するのか?」
「・・・・・・」
コンピューターの音声は応答しない。
「マザー、どうした?」
「惑星アップルには到着出来なかったわ」
「到着出来なかった? どういうことなんだ?」
ワンはボトルを口に咥えようとしていたが、動きを止めた。
「実は航路から逸れてしまっているの」
「私たちが眠ってる間にか?」
「ええ、そうよ」
「リカバリーしなかったのか!?」
「しようとしたわ。でもそれはもう不可能だったの」
ワンは補水液を一口飲んだ後、ボトルを台に戻して、右手で自分の眉間を押さえた。
「どんなトラブルだったんだ?」
「クルーがスリープ中に、予期しない空間移動物質に遭遇して、本船は進路を変えざるを得なかったの」
「何に遭遇したんだ?」
「判らないわ。超微粒子の雲のようなものが高速でぶつかって来て、船体表面を削り、穴を開けたの」
「特異点か何かなのか?」
「ええ。レーダーやセンサーには全く反応しない未知の物質だったから、異常事態に気付いて、急遽進路を変更したんだけど、サイドスラスターの多くに損傷を負ってしまったの」