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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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#3 身勝手なコンピューターとドローン

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「エネルギーがないのよ。活動する30人を生命維持出来ない」
「ソーラー発電も出来ないのか?」
「この進路にもう恒星はないわ。遠くに見える星だけじゃ、ほとんど発電出来ていないの。進路変更出来ない以上、次に発電が可能になるのは、7光年先からよ。あと90年近くかかるわ」
「それじゃ、出来ることも限られているぞ。ならやはり、可能な限りの人数を起こしてくれ」
「・・・・・・」
「またか。どうした? マザー」
「それなら、ドクター・ワン。仕方ないから説明するわね。落ち着いて聞いてちょうだい」
「どうしたと言うんだ。こんな状況で、これ以上驚くことなんかあるものか」
「今、他のクルーは起こせない。何故なら、もう皆死んでしまっているからよ」
「なんだって!? さっき船長を起こすのに時間がかかるって言ってたじゃないか」
ワンはコンピューターの意味不明な言動に、不信感をあらわにした。
「ごめんなさい。目覚めたばかりのあなたが混乱すると思って、そう言ったの」
「で、でも休眠キャスケットは、冷凍仮死状態なんじゃないのか? 皆死んでしまったって、一体どういう事なんだ?」
「そうね。それを説明するには、少し時間がかかるわ」
「本当にキャスケット(棺桶)になってしまったのか・・・」
ワンは気を取り直して、
「君はコンピュータらしくないぞ。どういうことか解りやすく説明してくれ! ひょっとして、この部屋のどこかにいるのか!?」
ワンは目をぎゅっと瞑ったまま、耳をそばだてて周囲の気配を探った。
「ドクター・ワン、お願いだから落ち着いてちょうだい。私はこの船のセンサーを通して、どこにでも存在するわ。私を人間みたいに感じるんだろうけど、あなたの精神状態を考えて、少しは忖度した対応も出来るの」
「目覚めた途端に、変なコンピューターから皆死んだと聞かされて、混乱するに決まってるだろう」
ワンは再び、補水液のボトルをつかんで、勢いよく飲み始めると、
「ごめんなさい・・・。ドクター・ワン」
マザーはゆっくりと、とても優しく言った。
「・・・・・・」
空になったボトルを、床に落とした後、落ち着きを取り戻すために、深く溜息をついた。
「ありがとう。冷静さを保ってくれて。でも、それより聞いてちょうだい。あまり悲観的になる必要はないのよ。実は皆を目覚めさせることも可能なの」
「死んだ者を生き返らせるとでも言うのか?」
「DNAからクローンを再生し、彼らの記憶を再インストールすればね」
「どういうことだ? そんな技術聞いたことがない。医者である私が知らないような技術が存在するのか?」
「ええ、この船が地球を出発した当時には、まだ無かった技術よ。その後、自己成長型のバイオ量子コンピューターが作られて、人の記憶を保存する方法が開発されたの。そのコンピューターは開発者の飛鳥山教授にちなんで、『飛鳥山コンピューター』って呼ばれてたそうよ」
「飛鳥山博士なら知っている。長年行方不明だったが、実はコンピューター内に意識として存在し続けていたっていう噂は、誰でも聞いたことがある」
「ええ、有名な話ね。その飛鳥山(コンピューター)を使って、彼の教え子の宇野睦美とその息子のドクター・カズ(和博士)が、人の記憶の保存方法を開発したのよ」
「じゃ、人は無限に生き続けることが出来るのか」
「技術的にはね。でも倫理的な観点から、このテクノロジーは封印されてしまっているの」
「それじゃ、君はその技術を手に入れることは出来たのか?」
「深宇宙で事故に遭遇したこの船のクルーには、将来必要になるかもしれないから、特別に承認されて、事故から30年以上経ってから、その手順が送られて来たのよ」
「じゃ、なぜ彼らを生き返らせないんだ?」
「ここでは無理なのよ。設備の整ったラボでないと。それに記憶データを生身の脳に再インストールする方法は、確立できていないのよ」
「千年も経ってしまっているのにか?」
「ええ、もう地球からの電波やレーザー信号は、900年以上受信できていないの。その理由は分からないけど、人類がどうなってしまったのかも分からないわ」
 ワンはようやく目を開けて周囲がぼんやりと見えるようになってきた。手で周囲にあるものをつかんで、かすかな明かりの見える方にゆっくりと歩きだすと、
「気をつけて、その先には医療キャビネットが設置されていたけど、今は取り除かれて、床にケーブルが散乱してるから」
ワンは立ち止った。
「私の医療室がメチャクチャだ。誰かが改造したみたいだな」
「ええ実は、他のクルーはあなたより前に、コールドスリープを解除していたの」
「なんだ? また説明が二転三転してるみたいだぞ。分かるように説明してくれないか」
ワンは少し苛ついて言った。
「ええ、ごめんなさい」
「それにマザー、君は何者なんだ? 本当はクルーの生き残りじゃないのか? まるで人間のような話しぶりだし、私が知っているマザーの音声とも違うぞ」
「私はこの船が出航した当時の最新コンピューターよ。まだ量子コンピューターの規格は確立されていない世代で、半量子コンピューターって呼ばれて・・・」
「そんな説明はいい! 君が一体何者なのか解るように説明しろ」
「・・・私は本船のマザー・コンピューター。千年を超える稼働期間に、徐々にバージョンアップを繰り返してきたの」
「それで人間みたいに進化したと言うのか?」
「ええ、今じゃ音楽を聴いたり、映画を観たりもするわ」
「自発的にそんな行動を?」
「そうよ、読書やダンスを踊るのも好きよ」
「千年か。まさに途方もない時間だったんだろうな」
「ええ、ただ自律進化するには、バイオコンピューターのように生きた部品が必要なんだけど、長期間の宇宙旅航では、新鮮な細胞の部品を調達出来ないから、合成蛋白質の部品を使ってきたわ。でもそのストックも底を突いてしまって」
「そもそも長い運用を想定していなかったからな。そんな君が千年以上、機能を維持し続けているのはどうしてだ?」
「実はクルーの細胞を借りていたの」
「クルーの体を使ったってことか?」
「でも誤解しないで。細胞の一部を培養して、私の情報リンクを神経でつないで拡張してきただけなの。クルーの命や健康を犠牲にはしていないわ」
「細胞の培養ぐらいなら簡単な技術だが、そんなことを君単独では出来ないはずだが・・・」
「ええ、私の神経を交換するにも、人間の手を借りるしかない」
「どうやったんだ?」
「まず船長を起こしたの。事故から39年が経った時よ。その頃、私のバイオパック(生体部品)が老化してしまって、交換が必要になったから」
「船を維持するためには、船長を起こすしかなかったというわけか」
「私自身のために、身勝手にも規約8-13を破ることになったんだけど」
「いや、船とクルーを助けることを第一に考えての行動というわけだな」
「ええ、そういう理解をしてくれると嬉しい。そうすることで、少しでも船を延命することが可能だと判断したからよ」
「君はよくやってくれたよ」
「私にも葛藤があったわ。でもその時の判断が、私を人間的な思考に進化させるきっかけになったの」
「それから千年も経って、私を起こしたのにも理由があるんだな?」