#3 身勝手なコンピューターとドローン
プロローグ
真っ暗な深宇宙を高速飛行する物体がひとつ。
それは静かに慣性航行を続け、何もない空間では止まっているかのようにさえ思える。3次元の空間と言えど、前後左右、上下にも変化は全くなく、時間の経過さえ感じられなければ、4次元的にも静止しているような錯覚を覚えてしまう。
それが途方もない時間、宇宙をただまっすぐに彷徨う理由は何なのか?
その質問の答えに意味を見出すには、宇宙に対してその船はあまりに小さすぎる。
西暦2068年に深宇宙探査に出たこの宇宙船には、30人のクルーが乗船していた。彼らは、約12光年離れた宙域に見つかった惑星の、資源調査を目的とした先発隊として組織されており、その役割は尊大なものだったが、その宇宙旅航には、約60年の歳月が必要とされた。そして数年ごとに後続の宇宙船が派遣され、その惑星で資源開発を行い、人類の新しいコロニー建設が計画されていたのだ。
しかし、その一番船は目的地には到着しなかった。つまり航路を外れてしまっていたのだった。
作品名:#3 身勝手なコンピューターとドローン 作家名:亨利(ヘンリー)