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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
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そらのわすれもの8

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8-2


知春に手を引っ張られ、半ば引きずられるかたちで優太は走った。
ファースト店を出て、人通りの多い駅のほうへ向かう。
駅前の大通りに出た瞬間、知春は走るのをやめた。
ほっとしたような知春の表情と違い、優太は心配そうに後ろを何度も振り返る。
「来ないよ。」
「え?」
優太が聞き返すと知春は答えた。
「あの人は暫く来ないよ。」
手を繋いだまま、知春はにっこり笑った。
「あの人が動けないようにしたから、来ないよ!」
「え?」
「魔法で身体が感じる重さをいじったから、あの人は来れないよ。」
振り返った知春の瞳の色は普段と違い、夜空の星を思わせるような金色をしていた。
優太の足が止まる。顔がいつもと違った。睫毛は銀色に変わり、頬や唇は血色のいいピンク色をしていた。
知春はにっこりと笑うと言った。
「知秋ちゃんと違って私は魔法を使うことに抵抗はないの。」
動揺している優太に気にせずに知春は言った。
「私は精霊として自分が出来ることをした。変なことじゃないでしょう?」
「何したの?」
優太が聞くと、知春は答えた。
「ちょっと、あの人の感じる身体の重みをいじって、床にぴったりするようにした。怪我は倒れた時に足を打ってなければ大丈夫だと思う。」
よく見れば背も縮み、髪の色が月明かりに照らされ、白く銀色に明るくなっていることに優太は今さら気づいた。
「知春、髪…。」
「あ、結ぼうかなぁ…邪魔だよね。」
「そこじゃなくて。色。」
「え?」
気にしない様子。束ねかけた髪を視界に入る位置に持っていくと、知春はきょとんとして言った。
「本当だぁ…力使いすぎちゃったかな?たまにあるんだよね。すぐに治るから、平気だよ。」