新しい出会い
その2
今年の夏の初めに彼女から、旦那様が余命一ヵ月と告げられたという電話があった。娘二人が会社の介護休暇をとって帰省し介護に当たっているという。
それを聞いて暫く経ってから、何か食べ物でも届けようかと彼女の家まで行ってみた。玄関を開けると誰も出て来ず、上がり口に履物が所狭しと並んでいた。
ご主人が亡くなられた?という疑問が生じて、すぐには電話を掛けることはしなかったが、その後、一ヵ月と言われた余命は十日だったと、娘達が自分の家に帰って行ったその日の内に電話が掛かって来た。彼女は頭がうろうろで何も手が付かないと、しどろもどろになって泣いていた。
しっかり者で家の采配を振るっていた彼女の憔悴ぶりに私は驚いた。すぐに祭壇にお参りに駆けつけ、お盆月の八月初めに再び訪問した。
暫くは弔問者も多いだろうと訪問を控えていた所、彼女から、寂しくてたまらんから貴女の声が聞きたくて電話をかけたのよとすがるような声で言った。
私が毎日でも電話して良いよと言うと、ほんとに良いの?と何度もきいた。付き合い初めてから彼女のあのように心細そうな声を一度も聴いたことがなかった。