あの日、あの夏、あの子に向けて
神社前辺りはにぎわい、祭囃子や出店の声等が飛び交っている。
ツバサ『神社にたどり着いたころ、日はすっかり暮れ、ほとんど夜だった』
アオイ『神社は、お祭り特有の賑やかな雰囲気が入る前から漂っていて、たくさんの人で溢れていた』
アオイ「……たくさんいるね」
ツバサ「あぁ……」
アオイ「入ら、ないの?」
ツバサ「……」
ツバサ『理由があると自分に言い聞かせ、そっと右手をアオイに差しだした』
アオイ「えっ!?」
ツバサ「しっ、仕方なくだ!! こんなに人がいるんじゃ迷った時、探すのが大変だろ!!」
アオイ「うっ、うんっ! そう、だね!!」
ツバサ「だから……そのーー」
アオイ『ツバサのそんな不器用な優しさに思わず、顔がにやけ、そのままその手を取る』
ツバサ『言い終わるより先に、アオイが嬉しそうに俺の手を繋ぐ。知り合いに見られないようにと願いながらゆっくり、ゆっくりとアオイのペースに合わせて歩く』
アオイ「あっ! ツバサ!! 見て!! おっきなわたあめ!!」
ツバサ「おっ、おい引っ張んなよ!!」
ツバサ『アオイは、本当ガキみたいに騒いで、楽しそうで……本当、そんなアオイをいつまでもこうして横で見ていたいと思った』
作品名:あの日、あの夏、あの子に向けて 作家名:小泉太良