あの日、あの夏、あの子に向けて
ツバサの家から少し離れた道、息を切らすツバサ
ツバサ「おっ、おい!! アオイ!!」
アオイ「んっ?」
ツバサ『声がようやく聞こえたのか、アオイの足が止まる』
アオイ『気づけば、ツバサの家はすっかり見えなくなっていた。走っている間に涙も汗と一緒に飛び、あたしは笑顔でツバサの方を振り向いた』
アオイ「あっ、ごっ、ごめん!! ……ねぇ!」
ツバサ「んっ?」
アオイ「このまま、手、繋いでていい?」
ツバサ「っつ! だっダメ!!」
ツバサ、アオイに背を向けたまま歩き出す。
アオイ「あっ!! 待ってよ!! ツバサ!!!」
ツバサ『本当は俺も繋いでいたかった。でも、それはなんだかとても恥ずかしい気がして……俺はアオイの顔を見ずに神社に向かってただ歩いた』
アオイ『そう、言われるのはわかっていた。でも、あたしは、少しでも、ツバサを近くに感じていたかった』
作品名:あの日、あの夏、あの子に向けて 作家名:小泉太良