誰がために劇は成る
あいりがファーストの袖を掴む
あいり「つ、つまらないなんて、言わないでください」
ファースト「なんで?俺が書いた台本なんだから好きに言っていいだろ」
あいり「きゃ、キャラクター達は生きてるんです!ひ、必死に!だから、作った人がつまんないなんて言っちゃったら、死んじゃうんです!」
ファースト「何言ってんの?」
あいりがカバンから何かを取り出そうとしてるが、なかなか取り出せない
あいり「こ、これ、私が好きなぶ舞台のDVDです!」
ファースト「はぁ」
あいり「これを見て、もう一度、台本書いて欲しいです!」
ファースト「・・・もういいよ、書きたくない」
あいり「じゃ、じゃあ、あの、み観るだけでいいです! 」
ファースト「・・・わかったよ。」
あいり「ありがとうございます!」
ファースト「じゃあ、お疲れ」
ファースト「お、お疲れ様です!」
愛莉、走って下手へ退場
ファースト「生きてるってなんだよ・・・」
暗転
明転
部室
ゆーな「うーーーん」
あいりが上手から登場
あいり「ゆーなちゃんお疲れ」
ゆーな「うーん、お疲れー」
あいり「先輩たちはまだ?」
ゆーな「邪魔しちゃ悪いから今日はもう帰るって。別に気にしないからいいのに。」
あいり「そっか。それ、台本?」
ゆーな「うん。 アイデアはあるけど、やっぱ台本作るのって難しいわ。」
あいり「だよね」
ゆーな「・・・」
あいり「・・・」
ゆーな「・・・あー!やっぱりダメだー!浮かばない!」
あいり「息抜きにどっか行く?」
ゆーな「どっか行くって言っても、周りに何もないでしょ」
あいり「そ、そうだね」
あいり「・・・ねぇ」
ゆーな「ん?」
あいり「先輩たちの台本さ、あんなにきつく言わなくても良かったんじゃない?」
ゆーな「・・・ダメよ」
あいり「頑張って書いたものをあんなに否定したら、かわいそうだよ。」
ゆーな「あいりは読んでて気づかなかった?」
あいり「え?」
ゆーな「自分のことを知ってほしい、自分の好きなもの全部盛り込みました面白いでしょ?って内容で、自分たちが楽しければそれでいいみたな。」
あいり「・・・」
ゆーな「そういう台本は世に出さないべきなのよ。」
あいり「そうかな」
ゆーな「私たちも痛い目にあったでしょ、時間がないからってネットの台本にして、高校最後の大会だったのに」
下手からマイクを持って実行委員が登場
実行委員「陽南高校の皆さん、お疲れ様でした。それでは質問の方に移らせて頂きます。何かご質問のある方いらっしゃいますか?」
シーーーン
ゆーな、台本を書いてる机から立ち上がり、実行委員の隣に行く
ゆーな「お願いしまーす!!」
シーーーーーン
実行委員「・・・質問がないようなので幕合(まくあい)の方から質問させて頂きます。[喋りながら下手へ退場]今回の役作りで重要に思ったところはどこでしょうか」
SE:ロビーの人だかりを表した音(ざわざわした音)の中から、ダメだしが多く聞こえてくる
「さっきの劇、わけわかんねえぁ」
「1時間無駄にしたわ」
「役者の演技は良かったのに、台本がなぁ」
「もったいないよな」
「めっちゃつまんなかったー」
舞台の真ん中で立ち尽くすゆーな
ゆーな「もう二度と、つまらないなんて言わせない・・・」
あいり「そう、だね。」
ゆーな「・・・」
あいり「嫌なこと思い出させちゃってごめんね」
ゆーな「ううん。あの、さ」
あいり「ん?」
ゆーな「ちょっと台本読みしない?」
あいり「台本できてるの?」
ゆーな「違うわよ。これ。」
カバンから台本を取り出す
あいり「あ、それって」
ゆーな「そ、高校の時の部活動紹介でやったやつ」
あいり「うわー、なつかしー。」
ゆーな「私が初めて書いた台本。好きなんだけどなー、これ」
あいり「後味悪過ぎて先生たちには不評だったけどね」
ゆーな「でも1年生の評判はよかったじゃない?」
あいり「結構盛り上がってたもんね。あんまり入部してくれなかったけど。」
ゆーな「いいのよ、面白いって言ってくれた人が多かったんだから。それだけで私は、満足よ。」
舞台中央奥にある長椅子に腰掛けるファースト
あいり「・・・読もっか」
ゆーな「ありがと。どっちやる?」
上手側へ移動する。
あいり「ゆーなちゃんのお好きな方で」
ゆーな「じゃああいりはツルね」
あいり「オッケー」
ゆーな「準備はよろしですかー?」
あいり「お願いしまーす」
手を叩くとともに照明が二人からファーストへ変わる
二人は退場
ファースト [両手を顔に置く]「フーーーー。おっもしれぇ・・・。[DVDのパッケージを見返す]おもしれぇなぁ。・・・おもしれぇ」
5秒くらい考え込む。体を起こす
ファースト「台本、もっかい書いてみるか」
[暗転]
BGM「St.Thomas」Sonny Rollins 10秒から36秒まで、残りはフェードアウトで絞る
明転
部室
ファーストを除く4人全員集まっている
落ち着かない表情で全員ソワソワしている
上手からファースト登場
ファースト「お疲れ〜」
セカンド 「来た!」
ファースト「な、なんだよ」
ゆーな「今日が約束の1週間後です。」
ファースト「あ、書いてくれたんだ。」
ゆーな「忘れてなんかないですよね」
ファースト「忘れるわけないだろ。それに、みんなに見せたいものがあるんだ
23,ゆ,あ 「?」
ファースト「台本、また書いてきちゃった」
セカンド「お前、よく書けたな・・・」
サード「あんなボロクソに言われてもなお・・・・」
あいり「先輩・・・」
ファースト「愛莉ちゃん、DVDありがとね。スゲェ面白かったよ。」
愛莉 「い、いえ。こちらこそありがとうございます。」
ゆーな「となると、私の台本と先輩の台本のどちらかが学園祭で発表するということになりますかね」
ファースト「まあそうだな。」
ゆーな「この3人にはまだ私の台本は見せてないです。3人に読んでもらって、フェアに審査してもらいましょう」
ファースト「どっちでもいいけど。じゃあ、やろか」
机の上に台本を置く。お客さんにも誰がどこに置いたかわからないようにする。
照明、少し暗く
セカンドとサードで1冊を読む
ページをめくる効果音を入れる。ちゃんと台本を交換する
セカンド「オッケーだ」
サード「読み終わりました」
あいり 「うん」
ファースト「じゃあセーので指差すか」
全員「セーッの!」
セカンド、上手の台本に指さす。サードとあいりは下手の台本に指さす
セカンド「あ、お前そっち?」
サード「そっちの台本は僕には重たいですよ」
セカンド「そうか?俺はこの雰囲気好きだけどな。な?ファースト」
ファースト「ん?」
セカンド「これお前のだろ?」[台本を渡す]
ファースト「・・・いや、これ俺じゃないぞ」
セカンド「え?」
ゆーな「それ、私のです」
サード「・・・てことは」