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誰がために劇は成る

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ファースト「お前はあれだよ、「説明するセリフ入れる」じゃなかったっけ?」

サード「あー、それですそれです」

ファースト「よーし、がんばろー」


三人の照明が消え、女子二人に照明が当たる


あいり「でも、なんであそこまでこだわるの?」

ゆーな「いやなのよ、ああいう自分の好みだけで書いた台本。もうお客さんにつまらない思いさせたくないし、こっちも嫌なこと言われたくないでしょ?」

あいり「そうだね・・・」

ゆーな「まあ、単に私が読みたくないってだけなんだけどね。それと、憂さ晴らしじゃないけど、高校の無念をここで晴らしたいの。たとえ学園祭だとしても。」

あいり「うん、がんばろ」


三人に照明がつく


123「書けた!」

ゆーな「やっ。じゃあ、早速読みましょうか。」


ゆーな、三人の台本をパラパラ読む


ゆーな「・・・なんですかこれは」

ファースト「なにって」

セカンド「言われた通りに」

サード「訂正したまでですが」

ゆーな「言われた通りに訂正して、なんで悪化するんですか」

サード「ま、まっさか〜」

ゆーな「サード先輩の台本、私は「説明を減らしてください」って言ったんですよ。なんでもっとくどくなるんですか」

サード「あれ?」

ゆーな「ここ読んでくださいよ」

サード 「へいへーい
うちの高校はそれなりに名の通ったところで偏差値は中の上くらい、校門のすぐ前には両サイドに木が並んでいて春になると桜を満開に・・・なんてことはなく、一年中緑色をしていて四季も何も感じない。俺はそんなとこへギリギリ入れた。たぶんあの理科の問題で血小板というワードが頭から出てこなかったら俺は落ちていただろうな。みらいはもっと上を目指せたはずなんだがなぜか俺と一緒の高校に来た。あいつならもっと全国に名の知れ渡る高校..」

ゆーな「長いわ!説明で一時間かかるわ!てかこの説明のほとんどは絶対今後のストーリーに関わってこないでしょ!」

サード「い、いやだって」

ゆーな「次!二番貸して!」

セカンド「せ、セカンドって言って」

ゆーな「これも、冒頭が省きすぎてわけわかんなくなってますから。はい、ここ読んで」

セカンド「あ〜気持ち良いな〜・・・。(キラーン) え!?流星!?(ヒューン ドカーン!) (ドアの音)おはよ〜、お。」

ゆーな「おはよ〜、じゃなーい!お前の家は隕石か!ドーンのあとにガチャってもうこれ誰がどう見ても主人
公の家隕石になってんでしょ!」

セカンド「だってファーストが」

ゆーな「はい最後、一番!」

ファースト「お、おれ?」

ゆーな「ちょっと貸して。ごめん、愛莉も協力して」

あいり「う、うん」

ゆーな「じゃあここ読んで」

ファースト「だれがお前みたいなグランドキャニオン並みのストーンとした貧乳女にへんなことするかよ!」

あいり「あんただってモブキャラみたいなもっさい顔してるわよ!映画のプロモーション映像用で一瞬出
るけど本編には全く出てこないって顔してるわ」

ゆーな「どんな顔だよ!代わり映えしない顔だらかモブキャラって言われてるのにめちゃくちゃ説明が細かいな!モブキャラ大好きかこの子は!」


台本をあいりに強く渡す。あいりは台本を読む


ファースト「お、俺はセカンドに『もっとギャグ入れて』って言われたから」

ゆーな「私は、『場所の説明を入れて』って言ったんです。それはセカンド先輩へのアドバイスです」

セカンド「だから変な風になってたのか」

123「なーんだ。」

ゆーな「なーんだじゃないでしょ。と言うか、本当にこの台本のどれかをやるんですか?」

ファースト「今のところはそうなるかな」

ゆーな「既存の台本じゃダメなんですか?」

セカンド「前まではそれでよかったんだけどこうも人数が少ないと探すよりも作った方が早いんだよね」

ゆーな「いやでも・・・正直言って、この台本どれも面白くないですよ、そんなんでウケるんですか?」

サード「うーん、あまり考えたことないですね。僕らもそんなにこだわってやってたわけじゃないですし。それにこんな劇真剣に見てる人いないですよ。」

ゆーな「じゃあなんのために劇やってるんですか!?」

サード「劇が好きだから・・・?」

ゆーな「劇が好きだからって、それだけじゃなにもわかってないのも同然です!」

サード「そんなこと言われても」

ゆーな「先輩が書いた台本にテーマ性ってありましたか?」

サード「テーマ性? 」

ゆーな「他のも全然伝わってこなかったですよ」

ファースト「えっ」

ゆーな「ファースト先輩が書いた台本が一番ありきたりかもしれませんね、お父さんが再婚して不仲になってそれを解決する、今時安っぽいドラマでもこんなストーリー書きませんよ」

あいり「ちょっとゆーなちゃん、さすがに言い過ぎだよ」

ファースト「・・・・そうか、ありきたりか 」

サード「ファースト?」

ファースト「すまん、今日はもう帰るわ」 [上手へ退場]

サード「ま、待ってください!」 [同じく退場]

セカンド「しまった」

あいり「ど、どうしたんですかファースト先輩」

セカンド「あ、いや・・・あいつの親父さん、再婚しててな」

ゆーな「え・・・」

あいり「じゃあ、あの台本て」

セカンド「ああ、おそらくな」

ゆ・あ「・・・・・。」


暗転

夜っぽい照明
上手側にファーストにいて、下手側からサードが登場


サード「ま、待ってくださいよ!ハァ、ハァ。足早すぎ」

ファースト「なあ」

サード「はい?」

ファースト「やっぱ俺の台本、つまんなかったかな」

サード「そんなことないですって!」

ファースト「じゃあどうだった?」

サード「え」

ファースト「ほら、口ごもるんじゃねぇか。ははっ」

サード「そんなことないです、ただ・・・読んですぐ、ファーストの理想書いたんだなって思ったら、なんだか・・・」

ファースト「・・・そっか、わざわざ追いかけてくれて悪いけど、今日は一人で帰るわ。じゃあな」

サード「あっ・・・・・」


下手側の照明が消える。サード、下手へ退場。ファースト、数秒立ちすくんだ後に舞台奥に置いてある長椅子に座る


ファースト [台本をパラパラめくる]「・・・ありきたりか・・・・・。」


台本を長椅子に置き、舞台中央、手前に出てくる
照明を明るくする。ファースト(一樹)のリビングを表現する


一樹「俺の名前は伊藤一樹、高校生だ。俺は小さい頃に母さんを亡くして以来ずっと父さんと暮らしている。でもそんなある日、父さんは急に再婚して新しい「母さん」を連れてきた。」

父「ごめんな、急に再婚なんかしちゃって」

一樹「い、いいよ別に。父さんも大変だったんだから(ほんと、勝手すぎだっつーの)」


SE:ピンポーン


母「あーもう荷物多すぎ。ちょっとこれ手伝ってー。」

 「・・・。」

母「ほら、あんたも手伝ってよ。」


一樹、上手の舞台袖をじっと見ている。セリフを待つように無音が続く


母「ちょっと一樹君?なにぼーっとしてるの?」

一樹「え、あ、ごめんなさい」
作品名:誰がために劇は成る 作家名:平塚 毅