誰がために劇は成る
あいり「なんですって!あんた失礼にもほどがあるわよ!あんただってねぇ!」
ゆーな「初対面なのに仲いいな」
サード「ちょっと昴、お喋りが楽しいのはわかるけどまずは荷物を片付けてからにしてちょうだい。」
ゆーな「娘があんな言われ方してお母さん素通り?」
あいり「ふん!」
ゆーな、手を叩く音
ゆーな「なにこの茶番。見てられないんですけど」
サード「僕は好きだけどなぁ、こういうシチュエーション」
ゆーな「台本とライトノベルを同じにしないでください」
サード「す、すいません」
ゆーな「あとこのシーン」
ファースト「どれどれ」
ファーストと愛莉がゆーなの台本を覗きに行く
ゆーな、手を叩く
ファーストと愛莉がすごい速さで位置に着き、役を演じる。
あいり「私、こんな性格だから友達できないでしょ。だからね」
ゆーな「でしょって」
あいり「あんたみたいな友達ができて、私すごい・・・嬉しかった。」
ファースト「昴・・・」
あいり「私ずっと、辛くて、悲しくて、苦しくて、もういっそ私も死ねばいいのにって思ってたんだ・・・」
ゆーな「感情よくばりさんか」
ファースト「なにいってんだお前。俺たちは友達じゃない。」
あいり「え?」
ゆーな「『家族だ』。くさいわー。」
ゆーな 手を叩く
ゆーな「よくこんなセリフ吐けますね。」
ファースト「いや、それほどでも」
ゆーな「さっきのヒロインのセリフ、あれも「辛かった」ってセリフだけにしてあとは役者に演技させればいいんです。朗読会じゃないんですよ、演劇は。それに本当に辛かったらこんなにポンポンセリフ出てこないでしょ。」
ファースト「た、確かに。」
ゆーな「あと、場所がコロコロ変わりすぎなんですよ。意味のない場転多いすぎなんで場所減らしてください。」
ファースト「いや、俺にとっちゃ大事な場所だからよ、何としても入れてーんだ。」
ゆーな「うーん、じゃあもう少し場所がわかる説明入れてください。」
ファースト「オッケー、説明を入れればいいのね。」
ゆーな「次、セカンド先輩の台本」
セカンド「よしきた」
ゆーな「引き続きお母さん役はサード先輩でお願いします」
サード「またか・・・」
ゆーな「準備はよろしいですかー」
123・あ 「お願いしまーす」
ゆーな、手を叩く
セカンド「俺の名前は勝呂 叉刄兎(すぐろ さばと)、ごく普通の高校生だ。」
ゆーな「ごく普通の名前じゃないでしょ」
セカンド「俺は今近所の原っぱに散歩にきている。」
ゆーな「説明するなっての」
セカンド「夜の原っぱは良い。全てを忘れさせてくれる。心のモヤモヤとか、いやーなこととか。全部・・・。」
ゆーな「中二病かよ」
セカンド「あ〜気持ち良いな〜・・・。(キラーン) え!?流星!?(ヒューン)うわあああああああああ!!!!!(ドカーン)・・・な、なんだ? (プシュー ヒタ、ヒタ)お、女の子・・・? 君は?」
上手から愛莉登場
あいり「私は、ミューイトレギア式アンドロイド TL-1200 あなたが私の、ご主人様・・・?」
セカンド「・・・は?」
ゆーな「は?(強く)」
無音3秒ほど
セカンド「(目覚ましの音)うーん、なんか変な夢見たなー。(SE:ドア音)おはよ〜、お。」
あいり「・・・おはよう」
セカンド「だ、え?だ、誰?どちら様でいらっしゃいますか?」
ゆーな「何回聞くの」
あいり「さばとのママ様が作る料理はとても美味しいぞ。ママ様おかわり」
セカンド「いやいやいやいや、何勝手に俺んちに住もうとしてるんですか?自己紹介もしてもらってませんよ?」
サード「まあまあ、いいじゃないの。こんな可愛い子がうちにいてくれるだけで殺風景な家が華やかになるってものよ。」
ゆーな、手を叩く
ゆーな「お母さん止めてください!」
サード「いや台本にそう書いてあるもん・・・」
ゆーな「痛くて見てられないわ!」
セカンド「自信作なのに・・・」
ゆーな「しかもこっから先、なんちゃってSFが続いて淡々と話が進むから面白くないんですよね。せめてギャグ入れるとかもっと面白い展開とか」
セカンド「ギャグ入れればいいのか!」
ゆーな「他にも色々言いたいんですけど、めんどくさいんでとりあえずそれで」
セカンド「ウィース」
ゆーな「最後、サード先輩の台本」
サード「ようやくお母さん役から抜け出せる。」
ゆーな「これは、脇役無しね。では、準備はよろしいですかー」
123・あ「お願いしまーす」
ゆーな、手を叩く
サード「僕の名前は古郡神威(ふるごおり かむい)。ごく普通の高校生。」
ゆーな「ごく普通の名前じゃないから!」
サード「夢の中からの自己紹介失礼するよ。今、両親は海外へ行っていて、この家には俺一人・・・いや
あいり「ちょっといつまで寝てんのよ!」
サード「っさいなー、あと5分だけだって」
あいり「だーーーめ」
ゆーな「やり取りふるっ!」
サード「俺の時間くらい俺の好きにさせろよ〜。こいつの名前は陽ノ本魅良依、幼馴染だ。むかしっからおせっかいでやたら俺 に世話を焼きたがる。何考えてんだか」
ゆーな「あんたが何考えてんのよ」
あいり「ほら、行くわよ。」
サード「へいへーい。うちの高校はそれなりに名の通ったところで、俺はそんなとこへギリギリ入れた。みら
いはもっと上を目指せたはずなんだが・・・」
ゆーな「長い長い」
あいり「ちょっと何ちんたら走ってるのよ」
ゆーな「あんたもあいつが喋ってる時間よく待ってられるわね。」
サード「ちょ、いつの間に。もっとゆっくり行こうぜ。・・・・・・・・いつからだろう、昔は何もかもが新鮮でキラキラ見えていたのに、何に対しても無関心でつまらなく感じてきたのは」
ゆーな「すっごい説明口調」
サード「俺はこのまま、」
ゆーな「まだ続くの!?」
サード「この無表情な世界をあと70年だらだら過ごさなくてはいけないのだろうか。虚しい・・・。そう思っている俺も、この白紙ページの住人なんだ」
ゆーな、手を叩く音
ゆーな「説明しすぎ!くどくどくどくど」
サード「あるラノベの主人公は心の声でよく語るからそれを参考に」
ゆーな「書き直し」
サード「エェ・・・」
ゆーな「サード先輩は説明を減らしてください。」
サード「もっと短くか・・・」
ゆーな「じゃ、先輩方はさっき言ったとこ直してくださいね。」
123「はーい」
男三人にスポットが当たる
ファースト「おい」
23「何?」
ファースト「さっきゆーなちゃんに言われたこと覚えてる?」
サード「覚えて」
セカンド「ない!」
123「なー」
ファースト「なんだっけ。えーっと俺が」
セカンド「お前はあれじゃないか?『もっとギャグ入れる』」
ファースト「あー、なんかそんな気がしてきた」
セカンド「俺はなんだっけ」
サード「『もっと説明を減らす』だった気が・・・」
セカンド「それだ!」
サード「僕はーー」