悠々日和キャンピングカーの旅:③渥美半島の伊良湖岬
■旅の2日目(1月2日)
6時半頃に目覚めた。
バンクベッドの小窓のシェードを下げて恋路ヶ浜を見ると、まだ日の出前だが、東の空が白んできている。そして、多くの人たちが“日の出”を待っていた。今日は1月2日なのにと思うが、私と同じ心境なのだろう。
パジャマの上にベンチコートを羽織って外に出ると、昨夜の強い風は少し緩くなってはいたが、その影響も含めて体感温度は低い。日の出まではもう少し時間がありそうなので、キャンピングカーに戻って着替えて、デジカメを首から提げて、もう一度砂浜へ行った。
水平線上には多少の雲はあったが、雲間にはオレンジ色の太陽が見え始め、直ぐに、その上から、完璧な太陽が顔を出した。「“準”初日の出」だ。美しいオレンジ色の風景だった。恋路ヶ浜に来ている多くの人がそう感じただろう。今年のキャンピングカーの旅の安全を祈って、何枚かの写真を撮った。
キャンピングカーに戻ると、冷蔵庫の左上の赤いライトが点滅していた。何かのエラーが発生しているようだ。4秒毎の点滅なので、電圧が低下していることを表している。それで冷蔵状況がどうなってゆくのかは分からないが、念のため、冷蔵レベルを少し下げてみたものの、サブバッテリーの充電残量の減り具合が早い気がした。
伊良湖岬と神島の間の伊良湖水道の幅は4.4km、伊勢湾口であり、通称「伊良湖渡合(どあい)」と呼ばれる。潮流が速く暗礁もあり、利根川河口や阿波の鳴門とともに、日本の海の三大難所だ。そのため、水道の中央部には海上交通安全法で定められた伊良湖水道航路がある。それは幅約1200m、長さ約3900mの狭い航路だが、名古屋港、四日市港、三河港など日本を代表する港を往来する大型船が1日100隻以上も通航する混雑航路で、伊勢湾海上交通センターが大型船の航路を管制している。
伊良湖岬には海の真横に遊歩道がしっかりと整備されていて、ぐるりと一周回ることが出来る。朝の伊良湖水道や伊勢湾の風景を見てみようと、岬を一周、歩くことにした。
日本の灯台50選のひとつの白亜の伊良湖岬灯台、幾つもの白波が見えた伊良湖水道、速く荒い潮流を受けても堂々としている神島、その向こうに見えるのは対岸の三重県の伊勢志摩、見上げると伊勢湾海上交通センターの巨大な表示板、三重県鳥羽(とば)市に向かう伊勢湾フェリー、知多半島の南端の師崎(もろざき)、職場の慰安旅行で行ったことがある地魚三昧だった民宿のある篠島(しのじま)、伊良湖岬の北側のフェリーターミナル、道の駅「伊良湖クリスタルポルト」、マリーナ、約1時間の中身の濃い散策だったが、気に入った。次回は妻と歩きたい。
その中でも、特に印象的だったのはやはり「神島」だった。
小説「潮騒」を読んだことはあるのだが、半世紀以上も前のことであまり良く覚えていない。この旅が終わったら、もう一度、読んでみよう。(この紀行文を書いている今、まだ読んでいない。そこで、神島に渡る機会があるならば、その前にもう一度読むことに変更)
この島を目の前にすると、神島までの距離は4.4kmより近い感じがする。地図を見ると、三重県ではなく、愛知県の神島のように感じてしまう。そんなことを思いながら、手前に灯台、白波の見える海原の向こうに屹立したように見える神島の写真を撮った。この写真が気に入ったので、この紀行文の表紙に使用した。
これまで、この伊良湖岬を趣味のパラモーターで3回、「空の散歩」を行ったことがある。
恋路ヶ浜の東の端の砂浜から海風に向かってテイクオフ。アクセルを吹かすと直ぐに足下に砂浜が広がった。そして、伊良湖岬を成す標高91mの古山が次第に眼下の景色に変わってゆく。こんもりした古山の上空をゆったりと旋回しながら、東西南北の景色を楽しみながらフライトを満喫した。
神島までは一気に飛べるように感じるのだが、万が一のトラブルを考えると、大型船の航行に影響を及ぼしてしまう以上に、溺死してしまう可能性もあり、救助艇の伴走が必要だ。
古山の上空フライトの後は、渥美半島の西側と南側の海岸線の上空のフライトを楽しんだ。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:③渥美半島の伊良湖岬 作家名:静岡のとみちゃん