悠々日和キャンピングカーの旅:③渥美半島の伊良湖岬
■旅の初日(1月1日)
自宅を出て、浜松市街の南側を走る浜名バイパス(R1)に向かう途中、さすがに元旦は、トラックは殆ど走っていない。正月ならではの、着物を着て初詣に向かう人はいないかと対向車を見ていたが、残念ながら、見つけることは出来なかった。
浜名バイパスに入った。暫く走るとバイパスは海岸近くを走る。かつては、遠州灘が見えたのだが今は、新しく出来上がった防潮堤で海が見えなくなってしまった。“明日起きても不思議でない”と言われ続けて数十年が経った東海地震、地震対策はかなり進んだが、あの東日本大震災(3.11)で発生した津波被害がきっかけで、この10年間、急速に防潮堤の整備が進んでいる状況だ。
バイパスの先にかなりの勾配の上り坂が見えた。浜名大橋だ。海抜約30mの最高地点にも拘わらず、遠州灘も浜名湖側にも眺望が広がる。弁天島の南側の海の中に立つ赤い鳥居が特に目立つワンポイントだ。
パラモーターで以前、何回か、このあたりのフライトを楽しんだことがある。
ある日、霧が発生していた時のフライトでのこと。テイクオフしてから直ぐに、それほど濃くない霧の中に突入、アクセルを吹かして上昇を続けると、上空に空が見え始め、霧を突き抜けた。高度は海抜約100m、霧の中ではホワイトアウトの状況ではなかったが、足下には雲海のような景色が広がった。そのまま上昇を続けると、200mあたりからは、霧の全体を見ることが出来た。
沖合約1kmあたりで、海から湧き上がるように発生した霧が、岸に向かってゆったりと流れており、浜名大橋を抜け、JR東海道本線を過ぎたあたりでフェイドアウト(雲散霧消)している。“霧の一生”を上空から見た貴重な経験になった。ただ残念なのは、カメラを首から提げておらず、その様子を写真や動画に残せなかったことだった。
浜名大橋を下り始めてから、西に続く遠州灘の砂浜が広く長く見え、そこからのバイパスは、真横に砂浜と波打ち際が見える車窓風景になり、爽快なドライブになった。その先の大倉戸(おおくらと)ICからは、「浜名バイパス」から「潮見バイパス」に名称が変わり、上下4車線が2車線に減少。道の駅「潮見坂」を右に見ながら、愛知県に入ったあたりで、R42にハンドルを切り、渥美半島の最西端の伊良湖岬に向かった。
このR42は、浜松市から渥美半島の最西端の伊良湖、そこからは伊勢湾を横切り三重県の鳥羽までは海上、そして紀伊半島をぐるりと回り、和歌山市まで続く長い国道だ。
この渥美半島の南側は洪積台地で高くなっており、太平洋側は海食崖が形成され、その下には砂浜が広がっている。南からの海風がその崖に当たり、上昇気流となり、それを受けたパラグライダーが飛んでいるのをよく見掛ける珍しい場所だ。
その先には、NHKの朝ドラ「エール(主役:窪田正孝、二階堂ふみ)」の主題歌が流れるオープニングのシーンが撮られた美しい砂浜が広がる。
更にその先には、サーフィンのメッカ「太平洋ロングビーチ」があり、立ち寄ることにした。R42から海岸に下る道の街路樹は椰子の木で、その先には太平洋が見える。まるで大瀧詠一のレコードジャケットを彷彿させる情景だ。この日は風が強く、波が荒れており、サーファーはいなかった。
このロングビーチの東西の端の海沿いには道路はあるが、ビーチの大部分は道路に面しておらず、そのためか、美しい遠浅の砂浜が広がっている。かつて、この先の赤羽根(あかばね)漁港の東端から、2度ほどパラモーターでテイクオフして、ロングビーチの上を飛んだことがある。その時に見た海食崖の下に広がる遠浅の広い砂浜に打ち寄せる波がいつまでも続き、それが美しく、印象的だった。
その漁港の横の道の駅「あかばねロコステーション」に立ち寄った。駐車場にはキャンピングカーが1台停まっていた。ここのショップは、この地方の物産展のようで、海産物や果樹が多く、みかんが安かったので(110円/5つ)、買ってしまった。夕食のデザートだ。道の駅の前に広がる広場を散策しようかと思ったが、今夜の宿泊場所のことを考えると、駐車場の込み具合が気になり、散策はやめて、道の駅を出発した。その時、別のキャンピングカーが1台、入ってきた。伊良湖岬で再会するのだろうか。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:③渥美半島の伊良湖岬 作家名:静岡のとみちゃん