続・嘘つきな僕ら
17話「五年たち」
僕たちは、あることについて沈黙し続け、おそらくお互いに似たような不安を持ちながら、もう五年が過ぎた。
僕たちは、考え続けていた。自分たちの関係について。
この関係を、自分たちの血縁者にどう打ち明けようか、もしくは秘密にしておくべきなのか。
でも、周囲の友人や仕事仲間などに認めてもらえるようになったことで、僕たちは、自分の身内についても、わずかながら、希望を持つようになった。
“いざという時には、誠意しか役に立ちません”と、鈴木君は言った。彼は、家族にも伝えて、自分のことについては認めてもらえたらしい。
“何も初めから叱られて叩き出されたりはしないだろう”と、そのくらいの希望なら、確かにあった。でも、それは“確かな希望”ではない。
僕は、何日も、何週間も、何カ月も、何年もこのことについて考え続けて、自分を支えてくれているパートナーを両親に紹介できないことに、苦しんでいた。
それは、雄一に対しても、両親に対しても、裏切りのような気がしていた。
僕を守ってくれる雄一を、両親に対して顔向けのできない存在とし続けること。
やっと見つけた世界一大切な人が、おそらく両親からは不愉快と思われるだろうこと。
彼が、僕の両親から機嫌よく迎えてもらえるわけはない。そう思っていた。そう思わざるを得ない。「普通」ならありえないことなのだから。
今は疎遠ではあるけど、僕の祖父母はまだ生きていて、叔父や叔母だって居る。その人たち全員に納得してもらわなくちゃ、雄一は僕の隣に居られない。そのためには、僕の両親の協力が不可欠だ。
僕の両親が、息子の幸せのために、偏見や非難と闘う道を選んでくれるだろうか。それ以前に彼らの中にある価値観と、折り合いをつけてくれるものだろうか。
“もし身内からはねつけられれば、僕たちはまた居場所を失うかもしれない”
そう思うと、どうしても両親への紹介には踏み切れずにいた。その時に背を押してくれたのも、やっぱり彼だった。