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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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続・嘘つきな僕ら

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「へー!ほんとだ!可愛い系!」

「背ちっちゃいね!」

「まあいつも写真見せられてるからわかってたけど、よかったじゃん、雄一」

僕は、居酒屋の座敷席に近寄った途端に、口々に歓待の言葉を浴びせられ、一気に恐縮してしまった。

熱海に旅行に行った時に、雄一が言っていた「飲み会」は、ある週末の金曜日に実現した。

僕はとにかく、「彼らに気に入られたい」という一心で、参加に臨んだのだ。

仕事が終わってからだから、僕は途中からの参加になってしまい、店に着いてみると、すでにみんな酔っぱらっているようだった。

雄一は、今はもうない実家の会社に居た同年代の人、今の会社の同期など、様々な人を連れてきたみたいだけど、学生時代の友人は居なかった。僕たちは、高校生の頃は、たったの二人きりだったのだ。

そのことは、言わない方がいいんだろうなと思っていた。

「えっと、どうも…今日は、よろしくお願いします…」

舌が突っ張りそうになりながらもそう言うと、そこでも「礼儀正しい!」などと、褒められた。

僕はビールを注文して、すでに卓に出ていたつまみをいくつか食べさせてもらう。そこで、こんなことを聞かれた。

「それでー?手の付けようがなかった不良の雄一を懐柔したんだって?」

僕は思わぬ言葉にびっくりしてしまい、ちょうど飲み込もうとしていた鶏のから揚げが、喉に詰まりそうになった。

答えていいものかわからなくて雄一の方を見ると、こちらを見てにやにやと笑っている。どうやら、言っても大丈夫なようだ。

「あの…懐柔ってわけじゃないですよ。ただ、友だちになりたくて…」

僕にその質問をしてきた人は、僕のすぐ左隣に座っていて、眼鏡をかけて、後ろに向かって髪を撫でつけていた。彼は、人の好さそうな酔っぱらった赤い顔で、うふふと笑う。

「またまたぁ~。ずいぶん当時の話は聞かされたよ~?喧嘩してたとこに割って入って、守ってくれたんでしょ?」

「そんなことまで言ったの!?雄一!」

もう一度雄一を見ると、大きく頷き、こちらも赤い顔をしている。

「ああ。言った。家に手当てに来てくれたのも言った」

「言わなくていいよ!」

僕は、そんなことまで知れ渡っているんだと思うと、恥ずかしくて仕方なかったし、ほんのちょっとだけ、“恋人同士の秘密にしておいてくれてもいいじゃないか!”と、雄一に思った。

「まあまあ。そんなもろもろを我々は聞かされてね。「うん、こいつぁ本物だ!」と思ったわけですよ。稔くん」

さっきの眼鏡の人は、隣から僕の肩を叩き、何気なく僕のグラスにビールを注ぎ直す。

すると、あちこちから、「そうそう」という声が上がった。

「人を想う気持ちに国境がないのと、なんら変わらないよね」

「俺は、今みたいな雄一になれるまで、支えてくれてた稔くんに感謝する!」

「だよなあ」

僕はそんな言葉をほうぼうから送られて、その時やっぱり、泣いてしまった。

“よかった…!よかった…!”

僕たちはもう、締め出されて、二人きりで生きていかなくちゃいけないわけじゃないんだと思って、ほっとした。

「ありがとうございます…!みなさん…!」

僕が泣くのをその場のみんなは止めずに、気遣ってくれて、雄一は嬉しそうにしていた。

「大丈夫、稔くん。僕ら、みんなわかってるから」

「はい…!」

僕はその晩、酔っぱらってしまうことまではできなかったけど、もうずいぶんとリラックスして、楽しい飲みの席で過ごしていた。




作品名:続・嘘つきな僕ら 作家名:桐生甘太郎