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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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続・嘘つきな僕ら

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15話「ここに居ていい」






二人の人間が、一つの家に、今日から急に同居をする。僕たちがそんなことを始めたのはずいぶん前だったけど、その間に僕たちの生活に起こったことを、ここに挙げてみよう。

人の暮らしは、様々な速度で進み、様々に違った様式や手法がある。こう言うと変な言い方になるけど、僕はそう思う。

その中で、僕たちが一番衝突したのは、「音」だった。

僕は、元々から、大きな音は苦手な方だった。でも、雄一はそうではなかった。

鍋を五徳の上で動かす音が、雄一がやるとガタガタとうるさくて、二人暮らしを始めてしばらく経ってから、それが気になり始めた。

だからと言って喧嘩になんかならなかったけど、僕は「もう少し静かにやってよ!」と雄一に何度も念を押して、やっと改善されたのは、半年以上経ってから。

でも、いつしか、「いつまでも相手ばかり責めていても、きりのないことなんだ」と僕はわかり、それ以後はあまり口うるさく言わないようにした。

雄一の方から何か言われたことがあるかというと、彼は僕が洗濯物をついつい溜めてしまったり、掃除をしないでほったらかしておくのが気になるらしく、「おい、洗濯は?もう洗っていいよな?」といつも聞いてきた。

つまり僕たちはどっちもどっちで、争う理由なんかなかったわけだ。それでもやっぱり、たまに言い合いをしてから、「さっきはごめん」と謝った。

不毛なはずの小競り合いは、終わったあとには、「自分たちが乗り越えたもの」として僕たちをまた強く結び付け、確実な幸せになった。

何気ない毎日でも、君を見つめていられる。それが幸せなんだと知っていた。過去、僕はそれをすべて奪われたから。

だから、今度もそうなりやしないかと、怖い気持ちはどうしてもあった。



作品名:続・嘘つきな僕ら 作家名:桐生甘太郎