続・嘘つきな僕ら
15話「ここに居ていい」
二人の人間が、一つの家に、今日から急に同居をする。僕たちがそんなことを始めたのはずいぶん前だったけど、その間に僕たちの生活に起こったことを、ここに挙げてみよう。
人の暮らしは、様々な速度で進み、様々に違った様式や手法がある。こう言うと変な言い方になるけど、僕はそう思う。
その中で、僕たちが一番衝突したのは、「音」だった。
僕は、元々から、大きな音は苦手な方だった。でも、雄一はそうではなかった。
鍋を五徳の上で動かす音が、雄一がやるとガタガタとうるさくて、二人暮らしを始めてしばらく経ってから、それが気になり始めた。
だからと言って喧嘩になんかならなかったけど、僕は「もう少し静かにやってよ!」と雄一に何度も念を押して、やっと改善されたのは、半年以上経ってから。
でも、いつしか、「いつまでも相手ばかり責めていても、きりのないことなんだ」と僕はわかり、それ以後はあまり口うるさく言わないようにした。
雄一の方から何か言われたことがあるかというと、彼は僕が洗濯物をついつい溜めてしまったり、掃除をしないでほったらかしておくのが気になるらしく、「おい、洗濯は?もう洗っていいよな?」といつも聞いてきた。
つまり僕たちはどっちもどっちで、争う理由なんかなかったわけだ。それでもやっぱり、たまに言い合いをしてから、「さっきはごめん」と謝った。
不毛なはずの小競り合いは、終わったあとには、「自分たちが乗り越えたもの」として僕たちをまた強く結び付け、確実な幸せになった。
何気ない毎日でも、君を見つめていられる。それが幸せなんだと知っていた。過去、僕はそれをすべて奪われたから。
だから、今度もそうなりやしないかと、怖い気持ちはどうしてもあった。