小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

続・嘘つきな僕ら

INDEX|23ページ/43ページ|

次のページ前のページ
 



「あ〜、くたびれた…」

ある晩帰ってきた雄一は、ソファでのびていて、すっかり疲れ切った様子だった。

僕はソファの脇に座り込んで、横になっている彼の頭を撫でる。

「大丈夫?最近、帰りが遅いから…」

「ああ…係長になってから、もちろん仕事は増えたし、週一の会議も、深夜だし…昼間は営業部は動き続けてるからな…」

僕は彼のおでこをさすってあげて、頬にキスをする。元気が出るように。

そうすると、雄一はこちらを向いて、微笑んでくれた。

「よく似てるぜ、あの頃と」

そう言った雄一の顔は、高校生の頃、がむしゃらに勉強をして、なんとか周りに認めてもらおうと努力していた時と、同じだった。

“お前が居るから、頑張れるんだ”

そう言った時と。

「家に帰ればお前が居る。そうじゃなきゃ、俺は何もできない…」

急に彼の声は尻すぼみに小さくなり、雄一は顔を横に向けて床に目線を落とした。

もしかしたら、雄一は不安だったのかもしれない。くたびれ切るまで仕事をしなくちゃいけないことが。

俯いた雄一は少し辛そうな表情をしていて、寂しそうだった。僕はもっと雄一に近寄り、ソファにもたれかかるようにして、彼の体を抱く。何も言わずに。

僕は目を閉じて、彼の肩のあたりに頬を当て、雄一が話すことを聴いていた。

「俺には…俺の支えは、お前しかない。今さら離れ離れになることなんかないと知ってても…」

小さな声でつぶやく雄一の声は、同級生と喧嘩をして、それを悔しそうにこぼしていた時みたいだ。

僕には、言いたいことがあった。だから、ゆっくり口を開いて、優しく、でもしっかりとこう言った。

「ないよ、雄一」

雄一は、ソファの上で顔を上げて僕を見る。その目を見つめて、僕は彼に素直に向き合った。そうすると、どうしても笑いたくなる。

君の前では、素直に笑えるんだ。

「僕たちは、離れ離れになることなんかない。ずっと一緒に居るよ」

そう言ったら、雄一も嬉しそうに、穏やかに微笑んでくれた。




作品名:続・嘘つきな僕ら 作家名:桐生甘太郎