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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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続・嘘つきな僕ら

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8話「君の友だち」






「あの、さ…雄一…」

「んー?」

彼はまた、スマートフォンを覗き込んで、何かの文章を打っている。「ちょっと友だちからメッセージ来た」らしい。

“あの子かな…”

僕は、まだ傷つく必要なんかないのに、不安になっていた。

“でもちゃんと、雄一を疑ってないって事は、言わなきゃ”

そう。僕が勝手に、不安に思ってるだけだし。

雄一の部屋のリビングには、明るいホームドラマの動画が流れている。

目の前のローテーブルには、彼が最近好きで飲んでいるという、カフェラテと、僕が選んだコーヒー牛乳があった。

冷蔵庫から出してきたそれらは汗をかいていて、ぽたりぽたりと水滴を集めながら落ちていく。

「あの、この間、僕…見ちゃって…」

「何を?」

雄一はスマートフォンから顔を上げて、僕を見た。少し怪訝そうにこちらを見ている様子は、何らかの警戒を思わせる。それで、ちょっと不安になった。

「えっと…ごめんね、見るつもりはなかったんだけど…」

“そう、ちゃんと最初に謝ってから…”

「な、なんだよ」

明らかに狼狽え始め、話をしようとはしているけど、ちょっと身を引いている雄一。

「女の子と…メッセージ、してるよね…」

“僕、何を言ってるんだろう”

その時、素直にそう思った。

そりゃ、雄一だって、友だちが女の子なら、その子とだってメッセージのやり取りくらいするだろうし、そんなの当たり前の事だ。なのに、それくらいで関係を疑るなんて、僕、何してるんだろう。

僕はそう思って俯いていたけど、雄一は「ただの友だちだよ」と笑い飛ばしてくれるんだろうと思って、顔を上げる。

でも、彼はなんと、額に手を当て、悔しそうに顔を歪めていた。まるで、「バレた」と言わんばかりに。

でも、僕はそこで少し、「変だな」と思った。

もし浮気がバレたりしたら、まずは平静を装って、相手に気取られないようにするもんなんじゃないだろうか。こんなにあからさまに、悔しがったりしないんじゃ?

雄一は、だーっと息を吐き、言葉に迷うように、横を向いて考えているようだった。僕はもうそこまで疑ってはいなかったけど、でも答えは分からないままだ。

やがて彼は、そのまま僕を見ず、スマートフォンの画面をいきなり僕に向ける。

「えっ…?」

僕が“見ていいものなのか”と迷い始める前に、その画面は、この間の女の子とのメッセージ画面だと分かった。



作品名:続・嘘つきな僕ら 作家名:桐生甘太郎