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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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続・嘘つきな僕ら

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アイコンの可愛らしい女性の写真は変わらず。それから、この間は画面の端しか見えてなかったから分からなかったけど、なんと、メッセージ画面の背景に設定されたのは、僕の写真だ。

“どういうこと?”

あまりにちぐはぐな取り合わせで、僕はびっくりした。でも、雄一はスマートフォンを一度振って僕に突きつけ、「読んでみろよ」と言った。相変わらず脇を見たまま。

「え、いいの…?」

「いーから!」

言われるがままにメッセージを読んでみると、そこにはこうあった。


“菅家優子:それで?今度はなに?”

菅家優子、さん…ていう人なんだ…。

“古月雄一:あのさ、聞きにくいんだけど誘う時の雰囲気作りってどうすんの?”

“まあ、まずは灯りちょっと落として、テレビは消すよね”

“ふーん”

“あとは、ちゃんと「好き」って伝わること言われたほうがこっちも乗りやすいかな”

“どういう言葉?”

“どういう言葉でもいいけど、ベクトルが「好き」の方がいい”

“それじゃわかんねえ”

“バカかアンタは”


メッセージはそこで途切れている。

僕は、読んでいく内に、もちろんこれが「僕との関係のための相談」だと分かった。それに、相手の女の子に聞いている内容に恥ずかしくなったし、そんな事も知らずに疑ってた自分が馬鹿みたいだなとも思った。

最終的には、どうしたらいいか分からなくなってしまって、僕は雄一の方を向いたまま、ソファの上で膝を抱え、膝に顔を埋めていた。だって僕、今多分、すごく顔が赤いだろうし。

「おい」

頭上から雄一の声が降ってくるので、仕方なく、膝を抱える腕から、目だけを出す。

僕の顔を見て、彼は安心したように笑ってくれた。

「わかったか?」

「ん…疑って、ごめん…」

雄一もほっとしたみたいで、カフェラテを手に取ってひと口吸い、ソファに背中を投げ出した。それから、こんな風に喋り出す。

「俺さ、あんまり気の遣い方とか、知らねえの。考えてみてもよくわかんねえことあるし、優子にはよく相談乗ってもらってる」

「そっか…」

“僕も、谷口さんに相談に乗ってもらったし…”

「で?」

雄一はちょっと小首を傾げて僕を見る。それから、テレビを消して、リモコンで照明を少し落とした。

彼は僕に近寄り、ソファに手をついて優しく押し倒す。ドキドキはしたけど、ちょっとおかしかった。

言われたままのことを、僕にも見せておきながら、やってしまう彼。なるほど、気の遣い方はわかってないかも?

「これで、いいんかな?」

でも、そういった目がちょっと不安そうで、可愛かったから、こう言うだけにしておいた。

「いいと思います」




作品名:続・嘘つきな僕ら 作家名:桐生甘太郎