続・嘘つきな僕ら
アイコンの可愛らしい女性の写真は変わらず。それから、この間は画面の端しか見えてなかったから分からなかったけど、なんと、メッセージ画面の背景に設定されたのは、僕の写真だ。
“どういうこと?”
あまりにちぐはぐな取り合わせで、僕はびっくりした。でも、雄一はスマートフォンを一度振って僕に突きつけ、「読んでみろよ」と言った。相変わらず脇を見たまま。
「え、いいの…?」
「いーから!」
言われるがままにメッセージを読んでみると、そこにはこうあった。
“菅家優子:それで?今度はなに?”
菅家優子、さん…ていう人なんだ…。
“古月雄一:あのさ、聞きにくいんだけど誘う時の雰囲気作りってどうすんの?”
“まあ、まずは灯りちょっと落として、テレビは消すよね”
“ふーん”
“あとは、ちゃんと「好き」って伝わること言われたほうがこっちも乗りやすいかな”
“どういう言葉?”
“どういう言葉でもいいけど、ベクトルが「好き」の方がいい”
“それじゃわかんねえ”
“バカかアンタは”
メッセージはそこで途切れている。
僕は、読んでいく内に、もちろんこれが「僕との関係のための相談」だと分かった。それに、相手の女の子に聞いている内容に恥ずかしくなったし、そんな事も知らずに疑ってた自分が馬鹿みたいだなとも思った。
最終的には、どうしたらいいか分からなくなってしまって、僕は雄一の方を向いたまま、ソファの上で膝を抱え、膝に顔を埋めていた。だって僕、今多分、すごく顔が赤いだろうし。
「おい」
頭上から雄一の声が降ってくるので、仕方なく、膝を抱える腕から、目だけを出す。
僕の顔を見て、彼は安心したように笑ってくれた。
「わかったか?」
「ん…疑って、ごめん…」
雄一もほっとしたみたいで、カフェラテを手に取ってひと口吸い、ソファに背中を投げ出した。それから、こんな風に喋り出す。
「俺さ、あんまり気の遣い方とか、知らねえの。考えてみてもよくわかんねえことあるし、優子にはよく相談乗ってもらってる」
「そっか…」
“僕も、谷口さんに相談に乗ってもらったし…”
「で?」
雄一はちょっと小首を傾げて僕を見る。それから、テレビを消して、リモコンで照明を少し落とした。
彼は僕に近寄り、ソファに手をついて優しく押し倒す。ドキドキはしたけど、ちょっとおかしかった。
言われたままのことを、僕にも見せておきながら、やってしまう彼。なるほど、気の遣い方はわかってないかも?
「これで、いいんかな?」
でも、そういった目がちょっと不安そうで、可愛かったから、こう言うだけにしておいた。
「いいと思います」