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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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続・嘘つきな僕ら

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「もー!私相田さんめっちゃ好きだったのにいー!なんで恋愛相談なんか乗らなきゃいけないのー!」

「た、谷口さん、もうお酒はよしましょう!それ以上は毒ですよ!」

「うるさい!すみませーん!バイスサワーもう一杯ー!」

僕は、とても困っていた。

僕の恋愛相談に谷口さんが乗ってくれるはずが、店に着いてビールを一杯飲み干した途端、彼女は豹変したのだ。

目の前でべろべろに酔っている谷口さんは、お酒はもう三杯目だし、これ以上酔っ払ってしまうのも危ない。

僕は店員を呼んで、すぐにバイスサワーの注文を取り消していた。

谷口さんは、安居酒屋のテーブル席で半身を投げ出し脇を見て、拗ねたように唇を突き出している。

“困ったな。これじゃ相談どころじゃないし、明日からの職場関係に支障が出たりしたら…”

朝になって、お互いに気まずい顔で出社をし、元のようには喋れなくなる僕たちを、やっぱり思い浮かべてしまった。

でも、谷口さんはまた叫ぶ。

「でもね!いいの!私わりと優しい方だし、許す!」

「は、はあ…ありがたい、です…」

何も悪い事をしていないのに、なんだか申し訳なくて、僕はちっちゃくなってしまう。

居酒屋に響く店内BGMと、絶えず飛び交っている開放的な笑い声。

「それで?何で悩んでるの…?」

まだ少し拗ねてこちらを見てくれないながらも、彼女は僕に聞いてくれた。

「えっと、その…この間、相手が…異性とSNSのやり取りしてるの、後ろから見ちゃって、聞けなくて…」

すると谷口さんは、顔を上げてこちらを見た。

「聞けばいいじゃん」

「えっ!?」

僕は、あまりにあっさりとそう言われてしまったので、驚いた。でも彼女は澱みなく、こう続ける。

「気にして悩むくらいなら、聞かないとダメだよ」

「で、でも、聞きにくいですよ…だって、連絡取るななんて言えないんだし…」

「何、異性と絶対連絡取って欲しくないの?」

「いや、そんなことないです…」

「じゃあそれも言えばいいの」

「えっ?」

谷口さんは体を起こして、席に腕をもたせかけ、僕を見つめた。

「そういう時は、まず、黙って見ちゃったことを謝ってね?それから話をする。あと、束縛する意思はないってこともちゃんと伝えて、それから、「好きだから不安なんだ」って言うの」

「あ、ああ…確かにそれなら…」

“すごい”

僕は、目の前に居る酔っ払いの谷口さんが、突然賢人のように見えてきた。

確かに、谷口さんが言った方法なら、雄一が不機嫌になる事だってないだろう。

“女の人って…やっぱりすごい…”

「できそう?」

そう聞かれたので、僕は「なんとかやってみます」と答えた。

「すみませーん!ハイボール下さーい」

「だからもうお酒はダメですってば!」




作品名:続・嘘つきな僕ら 作家名:桐生甘太郎