続・嘘つきな僕ら
「もー!私相田さんめっちゃ好きだったのにいー!なんで恋愛相談なんか乗らなきゃいけないのー!」
「た、谷口さん、もうお酒はよしましょう!それ以上は毒ですよ!」
「うるさい!すみませーん!バイスサワーもう一杯ー!」
僕は、とても困っていた。
僕の恋愛相談に谷口さんが乗ってくれるはずが、店に着いてビールを一杯飲み干した途端、彼女は豹変したのだ。
目の前でべろべろに酔っている谷口さんは、お酒はもう三杯目だし、これ以上酔っ払ってしまうのも危ない。
僕は店員を呼んで、すぐにバイスサワーの注文を取り消していた。
谷口さんは、安居酒屋のテーブル席で半身を投げ出し脇を見て、拗ねたように唇を突き出している。
“困ったな。これじゃ相談どころじゃないし、明日からの職場関係に支障が出たりしたら…”
朝になって、お互いに気まずい顔で出社をし、元のようには喋れなくなる僕たちを、やっぱり思い浮かべてしまった。
でも、谷口さんはまた叫ぶ。
「でもね!いいの!私わりと優しい方だし、許す!」
「は、はあ…ありがたい、です…」
何も悪い事をしていないのに、なんだか申し訳なくて、僕はちっちゃくなってしまう。
居酒屋に響く店内BGMと、絶えず飛び交っている開放的な笑い声。
「それで?何で悩んでるの…?」
まだ少し拗ねてこちらを見てくれないながらも、彼女は僕に聞いてくれた。
「えっと、その…この間、相手が…異性とSNSのやり取りしてるの、後ろから見ちゃって、聞けなくて…」
すると谷口さんは、顔を上げてこちらを見た。
「聞けばいいじゃん」
「えっ!?」
僕は、あまりにあっさりとそう言われてしまったので、驚いた。でも彼女は澱みなく、こう続ける。
「気にして悩むくらいなら、聞かないとダメだよ」
「で、でも、聞きにくいですよ…だって、連絡取るななんて言えないんだし…」
「何、異性と絶対連絡取って欲しくないの?」
「いや、そんなことないです…」
「じゃあそれも言えばいいの」
「えっ?」
谷口さんは体を起こして、席に腕をもたせかけ、僕を見つめた。
「そういう時は、まず、黙って見ちゃったことを謝ってね?それから話をする。あと、束縛する意思はないってこともちゃんと伝えて、それから、「好きだから不安なんだ」って言うの」
「あ、ああ…確かにそれなら…」
“すごい”
僕は、目の前に居る酔っ払いの谷口さんが、突然賢人のように見えてきた。
確かに、谷口さんが言った方法なら、雄一が不機嫌になる事だってないだろう。
“女の人って…やっぱりすごい…”
「できそう?」
そう聞かれたので、僕は「なんとかやってみます」と答えた。
「すみませーん!ハイボール下さーい」
「だからもうお酒はダメですってば!」