悠々日和キャンピングカーの旅:②朝霧高原と富士五湖
■富士山麓の朝霧高原と富士五湖の旅の初日
少し寒い場所での車中泊はどのような状況になるのか、先ずはひとりで、それを体験しておきたかった。そこで、冬用のタイヤを持っていないので、路面が凍結しない内に、朝霧高原や富士五湖に行くことにした。
静岡県西部の自宅からはR1(国道1号線)で東に走り、駿河湾の港町清水から身延路(みのぶみち)と呼ばれるR52を北上。山梨県に入ってから間もなく、富士川が見えてくる。そのあたりで、R52から対岸のJR身延線と平行に走る県道を選択。やがて、食事処には「ほうとう」ののぼり旗が立ち並び、山梨県内を走っていることを実感した。
JR身延駅周辺には、瓦屋根に白壁造りの和風の雰囲気に統一された街並みが広がっていた。そこは「しょうにん通り」、アニメ「ゆるキャン△」の野クル(野外活動サークル)の3人が「みのぶまんじゅう」を食べたベンチが見えた。「ゆるキャン△」ファンの私にとっては嬉しい車窓風景だ。
この歳でアニメ(?)なのは、アウトドアライフに夢中になっている若い人の気持ちや行動、その後の成長を見ていて楽しく、アニメとその実写版も見ている。それに、自宅から割と近い場所が舞台になるのも嬉しい。
身延から北上を続け、R300の本栖道(もとすみち)に入ってから直ぐに、武田信玄の隠し湯「下部(しもべ)温泉郷」に到着。この温泉にはこれまで浸かったことがなく、実は今回の最初の目的地だった。それにしても湯煙は見えず、人影も見当たらない。幼少の頃から慣れ親しんだ大分県の別府の温泉とは対照的な温泉地の雰囲気だ。
下部川に架かった温泉橋の先の駐車場に駐車。「下部温泉会館」が見えたので、そこへ行って、日帰り温泉をやっているホテルや旅館を教えてもらうことにした。
多くのホテルでは日帰り温泉をやっていないとのことだったが、この温泉会館では入浴が可能とのこと。キャンピングカーまでタオルを取りに行ってから、入浴。少し温めだったので、ゆっくりと長く浸かった。戦国時代の手負いの体を癒すには良い温泉だったのだろう。後で知ったのだが、源泉は温めで、ゆっくりと浸かるのが下部温泉の特徴とのことだった。
ほぼ同じタイミングで湯に浸かった男性がいて、声を掛けると、南アルプスの前衛峰のひとつ、七面山(しちめんさん)に登ってきたという。ここまで走って来た私とは違って、下山して湯に浸かっている彼には、たいへん有難い温泉だっただろう。
入浴後は温泉会館の管理人と会話。昔からここは湯治場なので買い物するような店もないとかで、賑わう温泉郷とは異なる湯治場の雰囲気を感じた。いつまでも体がポカポカするよとの説明もあり、今夜の寒さ対策が出来たみたいだ。
会話の後は、下部温泉郷の奥の方に行ってみた。「ザ・温泉宿」のような外観の宿があり、手前の橋の欄干を入れて写真を撮った。その夜、ネットで調べたら、登録有形文化財の「大市館裕貴屋」だった。
本栖道に戻り、天子(てんし)山地の厳しい勾配の上り坂を駆け上がった。季節は冬、針葉樹はどれも葉を落とし、寒々とした景色だった。
そういえば「ゆるキャン△」の主人公のひとりの“なでしこ”がこの坂道を自転車で上ったことを思い出した。標高差は約700m、すこぶる体力を持った女子高生だったことを改めて認識した。峠のトンネルを抜けた先の本栖湖中ノ倉峠展望台からは眼下に本栖湖が広がる絶景で、千円札の裏の富士山の絵と実物を比べることが出来る場所ではあったが、残念ながら、雲が掛かって見えなかった。展望をそこそこ見た後、疲れ果てたなでしこが寝ていたトイレ前のベンチの写真も撮った。
富士山の外周道路の富士パノラマライン(R139の南部、R138の北部)で南下して、道の駅「朝霧高原」に到着。標高900mのここが今夜の車中泊の場所だ。広い駐車場のベストな場所は他のキャンピングカーが停まっており、ベターな場所に停めた。
夕方、道の駅の外気温は3℃と表示されていたが、キャンピングカーのダイネット(リビングスペース)内は15℃だった。そこで、遮光や断熱効果のあるシェードを使用したが、次第に室温が下がったため、FFヒーター(ダイネット用の石油ファンヒーター、その燃料はキャンピングカーの軽油)のスイッチを入れて暖かくした。軽い夕食を食べた後は、TVは地デジ電波を受信出来ず、その原因は室内アンテナの低い性能なのか、恨めしかった。
録画を見ながら、今日の出来事をパソコンのエクセルを使って、箇条書きの簡単な「旅のメモ」を作成した。その後の旅でも、このメモを書き続け、こうした紀行文を作成する際に役に立っている。
就寝前にトイレに行ったところ、外はかなり寒く、戻ってきた時のダイネットの温かさを幸せに感じた。
FFヒーターを消した後、サブバッテリーの充電残量(電圧)をチェックしたところ、緑と赤の両方のランプが点灯した。電圧がかなり下がってきているようだ。明日の朝は、その状態で、100V電源が使えるのかどうか、不安がよぎった。バンクベッドの布団に入ると、眠気が不安に勝り、眠りに就いた。
作品名:悠々日和キャンピングカーの旅:②朝霧高原と富士五湖 作家名:静岡のとみちゃん