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静岡のとみちゃん
静岡のとみちゃん
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悠々日和キャンピングカーの旅:①伊豆半島

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 石廊崎からは半島の西海岸のマーガレットライン(R136)を北上。この道の海側には所々に白い女性像が立っていることから、別名「彫刻ライン」と呼ばれる国道だ。
 伊豆半島の東側の道路に比べ西側の道路は、幅が狭く、コーナーが多く、上り下りも多い。対向車が来ていないかどうかを気にしながらの運転が続いた。その代わりでもないが、手付かずの海岸の風景が素晴らしく、特に、伊豆西南海岸の景色は最高だった。

 少し走った先には、野猿の生息地の「波勝崎苑(はがちざきえん)猿園」があったが立ち寄らず。
 その理由はひとつのトラウマのせいだ。小学校の修学旅行で大分県の高崎山に行った時のこと。近付いてきた猿が目の前の友達に飛び掛かり、抱き着き、その猿を振り解くのに大変苦労した光景が強烈に脳裏に残っている。それ以降は、フェンスのない場所にいる猿には絶対に近付かないことにしている。けれども、動物園の猿山の猿は安心して見ることが出来て楽しい。

 昼になったため、海から少し内陸部に入るが、那珂川沿いに遡り、道の駅「花の三聖苑伊豆松崎」で昼食を取ることにした。川沿いには桜並木が6kmも続いてはいたが、今は冬ごもり中だ。今度は春に、また来よう。
 この道の駅は山間の静かな場所にあり、駐車場には数台のクルマとその奥にはキャンピングカーが停まっていた。何故か、そちら側ではなく反対側の駐車場に入った。その時、ルーフベントカバー(換気扇の外側のカバー、屋根に取り付けられている)が木の枝に当たり、破損を心配したが、問題は無かった。残念ながら、食事処は閉店していたので、持参したカップ麺と缶詰の簡単な昼食になった。
 この旅以降も、何故か、駐車場に停まっているキャンピングカーの隣に駐車することはなかったが、1年半後に、他のキャンピングカーの旅人と色々な会話をして以来、他のキャンピングカーの近くに駐車するようになった。

 那珂川を下り、再びR136で北上すると、直ぐに堂ヶ島に到着。
 ここは遊覧船に乗っての洞窟巡りや引き潮の時に三四郎島まで歩いて渡れるトンボロが有名で、我が子が小さい頃、親戚や家族と一緒に行ったことがあったので、今回はパスした。

 その後、R136は海岸から離れ、山の中を走り、幾つかのトンネルを抜け、宇久須(うぐす)の町に入った。家族で以前、この地のキャンプ場に行ったことを妻と話し始めた時、「宇久須キャンプ場」の看板が見え、ハンドルを切った。
 ここは娘や息子が小さい頃に家族で、2泊3日のキャンプをした砂浜に面した場所で、泳いだ後に体を温めたり、砂を落とすことが出来た小さな温泉プールがあったのだが、今は無く、炊事棟やトイレの施設は新しくなっていた。海だけは当時の風景のようで、それ以外を思い出すには、アルバムの中の家族写真を見るしかなく、約20年の時の移ろいを感じた。

 その後も山道が続く。突然、視界が開け、海の向こうに、雲の掛かっていない完璧な富士山の山容が見えた。ここまで北上を続けてきた西海岸からは見えなかった富士山が私たちに、伊豆半島を回って来たことを気付かせてくれた。
 富士山の頂上の東側には、ほぼ同じ高さに少し形が変わった雲が浮かんでいた。後日、ニュースで知ったのだが、山頂に笠雲ができた後、その冷えた空気が下って、南からの水分の多い風に当たってできる“つるし雲”という雲で、それが出ると必ず雨が降るとのこと。この旅が終わった翌日の月曜日は雨だった。

 土肥(とい)からは北上せず、半島の中央部に向かう西伊豆バイパス(R136)を走った。かなり急な勾配のためアクセルを踏み続けた。中腹に差し掛かったあたりでは、季節を思い出したように山が紅葉している。それに西日が当たり、美しい山容になっていた。
 伊豆縦貫道(R136)には月ヶ瀬ICから入った。ストレスフリーの道に感謝しながら走る。途中からは駿河湾に面したR414に入り、沼津港に向かった。
 沼津魚市場の東側に広がる飲食店街には多くの海産物の販売店があり、幾つかの干物を買った。店のおばちゃんと会話しながら、美味そうな干物を選んでいる妻は、最も妻らしい姿に見え、この旅で一番輝いていた。

 沼津港からはR1で西に向かった。清水ICから東名に乗り、下道に比べるとあまり変化のない高速道路の景色と初めての「キャンピングカーの旅」だったせいか、疲れを感じ始め、日本坂PAに立ち寄り、トイレ休憩で気分を変える。そして掛川ICで高速を下り自宅へ。無事に帰りついた。
 最初の「キャンピングカーの旅」が終わった後、妻から「走ってばかりだったね~」と、最後にきつい一発を貰ってしまった。